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ふるさと納税事件

こんにちは。

 ふるさと納税で、トイレットペーパーやティッシュペーパーを返礼品としてもらえると、生活コストが下がってかなりお得なのですが、一度に大量に届くとそれで秘密基地を作って遊べてしまうので、さらにお得ですよね。

 今日は、ふるさと納税の指定が取り消されたことが問題となった「ふるさと納税事件」(最判令和2年6月30日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 総務大臣は、ふるさと納税をめぐって自治体が寄付金を集めるために過度な返礼品を提供する事態が生じていたことから、返礼割合を3割以下にし地場産品にかぎるという通知を全国の市町村に出していました。さらに、ふるさと納税を規制する新たな法律を制定し、大阪府泉佐野市が過度な返礼品の提供を続けていたことに対して、総務大臣はふるさと納税の指定自治体から除外する決定を下しました。これに対して、泉佐野市は国を相手に、不指定の決定の取消しを求めて提訴しました。

2 泉佐野市の主張

 国からは、平成29年に「資産性の高いものは返礼品として不適当だ、返礼品は3割以下に」と、平成30年に「地方団体の区域内で生産されたものやサービスに限る」という通知があり、令和元年6月から施行された地方税法37条の2に、返礼品は「寄付額の3割以下の地場産品」と明記されました。私たちは、新しい法律施行後には過度な返礼品を提供しない旨の申出書を総務省に提出していたが、総務大臣は過去の「実績」を元に、泉佐野市を除外したのだ。そもそも「通知」には法的拘束力がなく、新しい法律を過去の出来事にさかのぼって適用するのは、法令不遡及の原則に反している。
 また、地方自治法247条3項にも「国又は都道府県の職員は、普通地方公共団体が国の行政機関又は都道府県の機関が行った助言等に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と規定されているはずだ。

3 総務省の主張

 泉佐野市は、平成27年度に約12億円、28年度に約35億円、29年度に約135億円、30年度に約498億円と、寄付金の受入額が大幅に増加していた。とくに法律改正が迫った平成30年12月と平成31年の2月から3月までに「100億円還元キャンペーン」と称し、従来の返礼品に加えて寄附金額の3~20%相当のアマゾンギフト券を交付するとし、平成31年4月2日から令和元年5月31日には「300億円限定キャンペーン」、「泉佐野史上、最大で最後の大キャンペーン」と称し、従来の返礼品に加えて寄附金額の10~40%相当のアマゾンギフト券を交付するとして、寄附金の募集をしていたのだ。我々は過去の実績から泉佐野市を不指定としたのであって、新制度の対象となる自治体の指定基準の策定は総務大臣に委ねられていたので、何ら違法ではない。

4 最高裁判所の判決

 確かに、泉佐野市は不指定に至るまでの返礼品の提供の態様は、社会通念上節度を欠いていたと評価されてもやむを得ないものである。しかし、従前は返礼品の提供について特に定める法令上の規制が存在しなかったのに対し、今回の改正規定により、法定返礼品基準が法定され、指定を受けた地方団体がこれに反した場合には指定の取消しの対象となり、その後2年間は指定を受けられなくなるという法令上の規制が設けられたことからすれば、改正規定の施行の前後では地方団体の行動を評価する前提を異にしており、その施行前における泉佐野市の返礼品の提供の態様をもって、施行後においても泉佐野市が同様の態様により返礼品等の提供を継続するものと推認することはできない。また、今回の不指定当時、泉佐野市が改正規定の施行後において法定返礼品基準に適合しない返礼品等を提供する予定があることを示す具体的な事情があったともうかがわれない。そうすると、不指定当時の事情の下では、指定申出につき、泉佐野市が法定返礼品基準に適合するとは認められないと判断することはできないというべきである。
 以上によれば、今回の不指定の決定は違法というべきである。よって、国が泉佐野市に対してした指定をしない旨の決定を取り消す。

5 ふるさと納税はゼロサムゲーム

 今回のケースで裁判所は、総務大臣が泉佐野市をふるさと納税制度から除外したことについて、国側が勝訴した大阪高等裁判所の判決を破棄し、返礼品を取り締まる法律がスタートした後に、それ以前に国側の「通知」に従っていなかったことを理由に不指定の決定をすることは、法律によって委ねられた範囲を逸脱した違法なものであるとして、無効としました。
 また、林裁判官の補足意見で、「ふるさと納税制度自体が国家全体の税収の総額を増加させるものではなく、端的にいってゼロサムゲームだ」と指摘されているように、納税者にとってはありがたい制度ですが、今後もその効果については検証が必要でしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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