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ひこにゃん事件

こんにちは。

 日本全国にはたくさんのゆるキャラがいます。そんな中、ネコのゆるキャラの中で一番好きなものは?と聞かれると、速攻で日光江戸村の「にゃんまげ」と答えてしまう松下です(にゃんまげに×7飛びつこう~♪のCMが何年経っても頭から離れません)。

 さて今日は、同じネコのゆるキャラ「ひこにゃん」をめぐる裁判(大阪高裁決定平成23年3月31日判例時報2167号81頁)について紹介してみたいと思います。

1 どんな事件だったか 

 滋賀県彦根市は国宝・彦根城築城400年祭のキャラクターデザインを募集していたところ、大阪のデザイナー・もへろんさんから提供された「ひこにゃん」を採用しました。ちなみに「ひこにゃん」のデザインは、井伊直孝を雷雨から救った伝説の招き猫と井伊家の兜を組み合わせているようで、彦根市から特別住民票も取得しているそうです。

 彦根市は「ひこにゃん」の3ポーズのイラストについて、もへろんさんとその所属するデザイン会社から著作権を買い取りました。

 その後、「ひこにゃん」が爆発的にヒットすると、もへろんさんは「ひこねのよいにゃんこ」というキャラクターを創作し、グッズを販売するようになりました。

 しかし「ひこにゃん」と「ひこねのよいにゃんこ」のイラストがよく似ており、もへろんさんが彦根市の努力にただ乗りしているのではないかということが問題となりました。そこで彦根市は、もへろんさんとその所属する株式会社桜井デザインに対して「ひこねのよいにゃんこ」のお菓子やグッズの製造・販売の差し止めを求めたのです。

2 もへろん側の主張

 彦根市には、「ひこにゃん」の3枚のイラストの著作権のみを譲渡していたにすぎない。着ぐるみやグッズを作ることができる翻案権は譲渡しておらず、私のものだ。だから、グッズの販売には問題がないはずだ。

<著作権法27条>
 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

3 彦根市側の主張

 契約書では、「ひこにゃん」のイラストに関する著作権等の一切の権利を譲渡の対象とすると書かれていたはずなので、私どもには複製権があると思います。

<著作権法21条>
 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 また、キャラクター募集の段階で、立体的な使用を前提としていたと思います。一般的にも、イベントのキャラクターについて平面的なものだけを念頭において、募集することはあり得ず、立体的なぬいぐるみ、ストラップなどのグッズ類や着ぐるみを前提として募集していることが多いでしょう。そうすると著作権法61条2項の「特掲」がなくても、翻案権も譲り受けている言えるのではないでしょうか。

<著作権法61条>
① 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
② 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

 よって、もへろん側による「ひこねのよいにゃんこ」のイラストを使用する行為は、彦根市の複製権ないし翻案権を侵害していると思います。

4 大阪高裁の決定

 大阪地裁は彦根市側の主張を退けましたが、大阪高裁の裁判長は次のような決定を下しました。

裁判長:もへろん側は「ひこねのよいにゃんこ」のグッズを販売してはならない。契約書では「著作権等一切の権利を譲渡する」としか書かれておらず、翻案権等が譲渡の対象であると具体的には明示されていない。しかし、契約書に添付された仕様書には、「キャラクターは、着ぐるみ等を作成する場合もあるので、立体的な使用も考慮すること」と定められていたので、彦根市が立体物については自由に作成・使用することができることが示されているといえる。したがって、翻案権は彦根市側にある。

5 その後の和解

 その後、もへろんさんと彦根市と間で、以下のような和解が成立しました。

・絵本2冊を除き、「ひこねのよいにゃんこ」グッズの製造販売の禁止

・グッズの製造販売業者が彦根市に対して解決金約370万円を支払う

・彦根市が「ひこにゃん」の映画やアニメを作るときには、もへろんさんの同意を必要とする

 今後も、ひこにゃんには、彦根市の観光をPRするために、活躍してもらいたいですね。

 では、今日はこのへんで。また。


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