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負担部分に応じた求償事件

こんにちは。

 既婚者の男性が妻以外の女性との不倫関係が明るみになり、妻が夫の不倫相手の女性に対して慰謝料100万円を払わせたとします。このとき法律上は、夫と不倫相手の女性が2人で共同して妻の心に傷を負わせたことになるので、不倫相手の女性は夫に対して50万円の償いを求める権利、つまり求償権を行使することができるのです。

 さて今日は、連帯債務者が債務の一部分について弁済したときに他の連帯債務者に対して求償できるのかどうかが問題となった「負担部分に応じた求償事件」(大判大正6年5月3日民録23輯863頁)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 植野元太郎、植野又七郎、他1名の計3名は、株式会社那智銀行から11266円を借り、連帯して返済することにしていました。その後、植野又七郎が那智銀行に3220円を支払って、5600円分の免責を得たので、上野元太郎らに対して1073円の求償権を行使するために裁判所に提訴しました。

2 大審院の判決

 植野元太郎ら3名は連帯して株式会社那智銀行に対して合計11266円の債務を負っており、各自の負担部分が平等の割合であることは当事者間に争いはないので、各自の負担部分は約3755円である。その負担部分はいずれの部分のものと限るものではなく、債務額の全部について存在するものなので、債務額の一部にも各自の負担する部分が存在するのは当然のことである。植野又七郎は、3220円を支払って、本訴の債務額中5600円の部分について、上野元太郎らと共同の免責を得たことは原審の確定した事実である。その共同免責のために支払った3220円中、植野元太郎と植野又七郎ら各自の負担に属する部分があり、植野又七郎は民法442条により植野元太郎ら各自の負担部分1073円について求償をすることができるのは明白である。ゆえに、原審の趣旨に基づき植野又七郎の本訴請求を認定したのは正当であり、不法な点はない。
 よって、植野元太郎の上告を棄却する。

3 不真正連帯債務と求償権

 今回のケースで裁判所は、連帯債務者の1人が自己の負担部分額以下の額の弁済をした場合でも、他の連帯債務者に対する求償権が生じるとしました。民法改正でも、民法442条に「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」という文言が追加されています。
 また、共同不法行為による不真正連帯債務に関しても、自己の負担部分を超えていなくても求償することができると考えられていますので、注意が必要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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