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非行中学生のしつけ不十分事件

こんにちは。

 不良映画の金字塔「ビーバップ・ハイスクール」の1作目で、ヒロインとして出演していた中山美穂さんが、観覧車でビンタされたシーンの収録後に、「映画なんて大嫌い」といって家に帰ったというエピソードを聞いて、本気の演技のすさまじさに震えたことがありますね。

 この時代は全国的に荒れた学校が問題となっていましたが、それにとどまらず非行中学生による殺人事件が起こったこともあります。その際に、子どものしつけと親の責任をめぐって裁判で争われたことがあります。一体、法律上どのようなことが問題となったのかを考える上で、「非行中学生のしつけ不十分事件」(最判昭和49年3月22日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 鳥取県に住む中学生は、2年生のころから、不良仲間とつるんで非行性が深まり、万引きや喫煙による警察の補導を受け、学校をサボるなどしていました。15歳となったときに、裾幅の広いズボンや色柄のシャツを買う小遣い欲しさに、新聞代の集金をしていた同じ中学に通う1年生を殺害して、その所持金1万3900円を強奪しました。被害者の母親は、非行中学生の不法行為責任を追及するとともに、その父母に対して監督義務違反を理由に150万円の損害賠償を請求しました。

2 被害者の母親の主張

 非行少年の父親は、家計をかえりみず、飲酒して収入の大判を使い果たし、酒を飲んでは子どもらに暴力を振るったりするので、非行少年も打ち解けて話すなどもできず、母親もただ甘やかすだけで子どもを放任し、家計にも追われていたので、家族団らんするような暖かい雰囲気にかけた家族だったそうですね。少年の非行に気づきながら、適切な教育や指導をしておらず、また小遣いを与えず物理的欲望をかなえてやらなかったなど、父親が飲酒や浪費をやめて監護義務を尽くしていたならば、非行少年の加害行為を回避することができたと思います。両親が監督義務を怠ったことが原因で、少年は犯行を行ったのであり、またその間に相当因果関係があるので、非行少年と両親は共同不法行為責任を負うはずだ。 

3 非行少年の父母の主張

 民法714条の規定によると、未成年者に責任能力がない場合には、その監督義務者である父母が代わりに損害賠償責任を負うことになっているが、うちの息子には責任能力があるとされているので、息子自身が損害賠償責任を負うだけで、父母の責任は問われないはずだ。

4 最高裁判所の判決

 未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であって、民法714条の規定が解釈の妨げとなるものではない。そして、父母の中学3年生に対する監督義務の懈怠と中学3年生による友人殺害の結果との間に相当因果関係を肯定した原審判断は、その適法に確定した事実関係に照らし正当として是認できる。
 よって、上告を棄却する。

5 監督義務者の不法行為責任

 今回のケースで裁判所は、未成年者に責任能力があったとしても、未成年者が犯罪を犯すことについて親権者が予想することができ、その損害の発生を防止できる可能性があるにもかかわらず、これを放置するなどの監護義務違反があり、この監督義務違反と損害発生との間に相当因果関係があるときは、独立して親権者の責任を追及できるとして、父母と子が連帯して150万円を支払うよう命じました。
 裁判所は未成年者自身にはお金がないことが多いため、被害者救済のためにその父母への損害賠償を容易に認める傾向がありますので、普段からしっかりと子どもをしつけておくことが重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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