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法隆寺火災事件

こんにちは。

 法隆寺の七不思議の1つに、五重塔の上に鎌がかけられているというものがあります。この鎌は、堺市にある水野鍛錬所で作られていたと知って驚きましたね。

  さて今日は、法隆寺の火災時に、その責任が問題となった「法隆寺火災事件」(最判昭和29年12月3日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 昭和24年1月26日の早朝、法隆寺金堂から火災が発生しました。駆けつけた消防団員らが、扉が閉まっていたため、壁に穴をあけて堂内に放水し、ようやく消し止められました。その後、現場の責任者と製造免許・形式承認のない電気座布団を配備した責任で、古西氏らが逮捕起訴されました。

2 検察側の主張

 被告人は、電気事業者である関西配電株式会社の承諾を得ずに、電気工事請負人の森村に、法隆寺金堂東入口北側に設けてあった配電室の配電線から新たに配電線2本を分散させ、これを配電盤二基に連結した上、金堂内に導き入れて丸型コンセントを取り付け、さらにテーブルタップ二基に連結して、電気座布団のコード16本を差し込めるように電気工事をさせ、濫りに電気工作物の施設を変更したのだ。これは電気事業法に違反する。

3 古西氏の主張

 私は、法隆寺国宝保存工事事務所の庶務主任ではなく、一技師なのに、庶務主任と誤解されて、重大な責任を負わされました。検事に、庶務主任だと伝えたのは間違いだから訂正してほしいと言っても、なぜか聞き入れられなかったのです。また、電気事業法38条は過失犯を処罰する規定なのに、私には何の過失もないのに有罪判決が下されるのはおかしいです。

4 最高裁判所の判決

 原判決は、被告人を罰金500円、2年間の執行猶予としたが、電気事業法は、公益事業令によって昭和25年12月15日に廃止され、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律によって、昭和27年4月28日から起算して180日間に限り法律としての効力を有するものとされたが、右180日間の最終日たる同年10月24日までに公益事業令に関する立法上の措置は何らなされることなくして経過したのである。したがって、公益事業令は10月24日間に限り失効したものと解すべきであり、犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるというべきである。
 よって、原判決中の被告人の有罪部分を破棄し、免訴する。

5 文化財保護法ができるきっかけ

 今回のケースで裁判所は、電気事業法38条の違反の行為は、公益事業令が失効した後においては、刑の廃止があったものとして免訴すべきとしました。
 この事件がきっかけとなり、文化財保護法が制定されることになります。また、法隆寺の火災があった1月26日は文化防災DAYとなっています。火の始末には十分に注意したいですね。
 では、今日はこの辺で、また。


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