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チョコエッグ事件

こんにちは。

 チョコエッグというお菓子は、基本的に夏には生産されていなかったという事実だけでなく、チョコエッグの開封動画の再生回数が9億回を超えていることにビックリしていますね。

さて今日は、チョコエッグのおまけの著作権が問題となった「チョコエッグ事件」(大阪高判平成17年7月28日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 フィギュア製造業者の株式会社海洋堂は、フィギュア入りお菓子を販売するフルタ製菓株式会社に対して、模型原型の著作権の使用を許諾し、フルタ製菓が商品の製造販売個数に応じてロイヤリティを支払う契約をしていました。ところが、フルタ製菓が海洋堂に対して製造販売個数を過少申告していたことが発覚したため、海洋堂がフルタ製菓に対してロイヤリティの2倍相当の違約金約1億8000万円の支払いを求めて提訴しました。

2 海洋堂の主張

 我が社は、フィギュアの世界では、日本だけでなく世界的に周知された職人集団である。我が社の商品は単なる「おまけ」の域にとどまらず、創作性、芸術性、技術力の高さから、フィギュアには思想、感情の動きが認められ、美術の著作物にあたる。フルタ製菓は、販売個数を過少申告していたのだから、契約通り未払いのロイヤリティと違約金を支払うべきだ。

3 フルタ製菓の主張

 我々が契約を締結したのは、フィギュアが著作物だと信じたからであったが、よくよく調べると図鑑などを参照しながら制作したフィギュアの模型原型は、著作権法にいう著作物にはあたらないことがわかった。だから、そもそも著作権使用許諾契約自体が、要素の錯誤により無効である。また、ロイヤリティの2倍相当額を定めた違約金支払規定は、公序良俗に反して無効である。だからロイヤリティも違約金も支払いをする必要はない。

4 大阪高等裁判所の判決

 動物フィギュアに係る模型原型は、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず、著作物には該当しないと解される。
 妖怪フィギュアに係る模型原型は、鳥山石燕(せきえん)の「画図百鬼夜行」を原画とするものと、そうでないもののいずれにおいても、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから、応用美術の著作物に該当するというのが相当である。
 アリスフィギュアに係る模型原型は、極めて精巧なものであるけれども、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず、応用美術の著作物には該当しないと解される。
 そうすると、海洋堂の請求を約1億6000万円の限度で認めた原判決は相当である。
 よって、フルタ製菓の控訴を棄却する。

5 フィギュアは芸術か?

 今回のケースで裁判所は、海洋堂が製作したチョコエッグのおまけである、動物シリーズ、妖怪シリーズ、アリスコレクションの3種類のうち、妖怪フィギュアに関して著作権性を認め、フルタ製菓の控訴を棄却することで、フルタ製菓に約1億6000万円の支払いを命じた大阪地裁の判決が確定しました。
 フィギュアが著作物と認められるためには、単なる「創作性」に加えて高い美術的創作が必要となるとされていますが、「美的」かどうかの判断は非常に曖昧な点があるので引き続き分析していきたいと思います。
 では、今日はこの辺で、また。


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