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処女と絶望とハートフィールド

20代も最後なので村上春樹の「風の歌を聴け」を読んだ。

村上春樹の処女作で、主人公である29歳の「僕」が大学生時代に帰省していた港町での出来事を回想するといった感じのストーリーだ。

読むのは2回目だが淡々とした文章の中に蒸し暑さと爽やかさが同居しているような作品だと私は感じている。

私は熱心なハルキストでもなければ、普段進んで読者をするタイプでもないので、適切な評価は出来ない。

ただ、何となく村上春樹の文章が読みやすくて好きなのと、村上春樹を読んでいる自分に酔っている節が明確にあり、内容を深くまで理解出来ないながら楽しんでいる。

なので、私の感想や意見は取るに足らないものである、という前提のもと「風の歌を聴け」で好きなフレーズを紹介したいと思う。

なお、有名な冒頭のフレーズ「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」は省くものとする。


ビールの良いところはね、全部小便になって出ちまうことだね。

「僕」の友人である鼠のセリフだ。

このフレーズはかなり好きで、引用してツイートしたこともあれば、酔っ払ったときに実際に言ったこともある。


車は買い戻せるが、ツキは金じゃ買えない。

これも鼠のセリフで、酔っ払って車で公園に突っ込んだシーンにて。

所謂"金持ち"を嫌いながらも自身は裕福な家庭に育った、という矛盾を抱えた鼠らしいセリフで好きだ。


今日もうんざりするような暑さだったが、そんなものは御機嫌なロックを聴いて吹き飛ばそう。いいかい。素晴らしい音楽ってのはそういうためにあるんだぜ。可愛い女の子と同じだ。

"ご機嫌なロック"を良い音楽として、それを"可愛い女の子"とイコールで結ぶという発想が実に面白い。なんとなく分かる、となる点においても。


あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風にして生きている。

私がこの作品で爽やかに感じる要素のひとつだ。

人生の儚さを表しているような気がする。"ずっとこのままがいいな"そんなことはありえない。


惜しまずに与えるものは、常に与えられるものである。

このフレーズはこの世の真理であり、私がこの真理に気づけたとき、人生が随分と楽に感じられた。


この小説を読むにあたって、取り憑かれたようにビールを飲んだ。それは25メートルプールをいっぱいにできるほどだ。

まあ、そんな感じで今日は締めたい、と思う。

そんな秋の始まり。






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