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絵本考察日記#02/バムケロ人気のひみつのあじ

こんにちは。今日はにちようび、です。そして、雨、です。
そんなわけで、今日は『バムとケロのにちようび』について書いていこうと思います。
突然ですがわたしは美味しいお料理に出くわしたとき、この味はいったいどんなふうにできているのか、ものすごーく気になるタイプです。
わ、このカレーおいし、なんのスパイス使ってるんだろ。
わ、この味噌汁おいし、出汁はなにで取ってるのかしら。といった具合に。
きっと絵本も、おなじなのだと思います。
目的、例えばいつか自分もベストセラーになる絵本を創りたい、とか、そういうことの前に、とにかくその絵本を面白い絵本にしている材料を知りたい。わたしがしたいことはそういうことなのだと思います。

それで、このバムケロシリーズ、ものすごく人気のようで、シリーズは5作も出ている。先日、絵本編集者の小野明さんの講座を聴きに行った際、小野さんとトムズボックス土井章文さんが主宰されているワークショップ『あとさき塾』の、受講生にこの絵本の作者、島田ゆかさんが在籍していたと知りました。
ゲラを持ってきたときには既に、ほぼこのバムとケロは完成していたと。
やはりとんでもないセンスの持ち主だんだろうなーと思いました。

この絵本は知り合いの方に教えていただいたものですが、その方のお子さんが、とにかくこのバムケロが大好きで、くりかえしくりかえし読んでいたと聞きました。
その秘密の成分について、今回はわたしなりに解剖するあそびをしてみたいと思います。「この料理どうやって作るのかしら」と考えずにいられない方は、どうぞ最後までお付き合いくださいね。

◎バムとケロ人気のひみつ成分

その1、ふしぎなふたりぐみ

二人組、コンビで人気の作品はたくさんあって、皆さんもちょっと考えただけでぱっと思いつくキャラクターはいくつもいると思います。
彼らのを関係性をざっとおおまかに分類してみると・・・
a)主従関係のあるふたり 
クリストファーロビンとプー、セーラーとペッカ(この絵本は爆弾級イレギュラーではありますが)、キキとジジ、あさえとちいさいいもうと(あやちゃん)
のように、飼い主・ペット、にんげんとぬいぐるみ、のようにある程度主従関係がわかりやすい関係のふたり(あるいは一人と一匹)。
b)同種のふたり
ぐりとぐら、がまくんとかえるくん
のように、見た目も種族も同じであるがゆえに生まれる親密性、親和性、見た目のわかりやすさ
c)その他ナゾの組み合わせのふたり
だるまちゃんとてんぐちゃん・かみなりちゃん、こんとあき
のように、主従関係も親和性もちょっと不明

お気づきのように、バムとケロは、c)の謎な二人にカテゴライズされると考えます。だって、犬とカエル、あまり仲良さそうなイメージはないでしょ。
だけどこの二人は、とっても仲良しなんです。
読む前に、表紙ですでに、「おや」が発生します。こういうたのしいつまずき小気味の良い裏切りがあると、やっぱり深みが増すのでしょう。

この犬(バム)とカエル(ケロ)、読みすすめていくと、どうやらバムのほうがやや保護者感はあります。もしかしたらその他のシリーズでは立場逆転以外劇もみられるのかもしれませんが、「バムとケロのにちようび」に関しては、バムがケロの悪戯や素行(掃除したばかりの部屋を泥だらけにするという!!)にも、しょうがないねえ、という上下皮膚がたるたるの愛らしい目を細めて見守っている温かさを感じます。それでも、バムがケロを飼っているというわけでは無さそうだし、二人共のグッズもタオルも並んでいるし、一緒に住んでいるからして家族なのか、カップルなのか、親友同士なのか、はっきりとはわからない。わからないままがいい。

この二人関係性の縦横が曖昧だと、読んだわたし、あるいはこども、はどちらにもなれるというメリットもあると思います。ぐりとぐらだったらどっちになってもそんなに変わらないかな、二人で一つだし、という感じのところが、バムになってせっせと家事をしてケロのお世話もして楽しいこともじゃんじゃんやっちゃおう!もアリだし、いやいや今日はケロになってバムに甘えちゃおう、しっぽにドーナツひっかけてみちゃえ!もアリなのです。(もちろんこれは年齢、時期によってa)でも当てはまると言えますがこのはなしはまたこんど)

この並行性というか、縦横人種ごちゃまぜの中で生まれる愛情が、この二人に何度も会いたくなる大きな理由なのだという気がします。

2、1頁にかけたい時間の長さ

これは多くの人気ベストセラー絵本に、共通のたのしさだと考えています。
たとえば。林明子さんの「はじめてのおつかい」、富安陽子さんの「じごくのサラリーマン」、これらの絵本は何度読んでも新しい発見があり、緻密に組み込まれた作者、作家の遊び心があり、ゆえに子どもたちは何度もなんどもこの絵本を持ってきます。「これよんで」。と。え、またこれ?!というおとなをびっくりさせるほどに。やはり絵本はエンターテイメントのひとつであることは間違いないと思うし、それには飽きない、むしろもっとこの世界に入り浸りたい、という絵であることはかなり重要といえます。
ちなみにこの「絵さがし」の絵本の魅力について語りだしたら日が暮れてしまいますので、話をバムケロにもどします。

この「バムとケロのにちようび」も、絵さがしがほんとにおもしろい。
二人のうちどちらのセンスなのか(わたしの予想ではバム)、とにかくこの家、おしゃれなんです。ソファーやクッションのファブリックもかなり良いのだけど、使っているおもちゃの質も良さそうなんですねぇ。子どもだったら、もっとこの家のサイドストーリーや時間の経過による変化を、ピピピ!っと拾って楽しめるのだろうと思います。まだ字が読めないからこそのアドバンテージがここに。

わたしの好きな頁は、ドーナツを揚げる場面。ケロちゃんが油であつあつの鍋に投げているドーナツ生地(じぶんの顔型)、その軌跡じゃ届かないでしょー!!とツッコミをいれていたら案の定、その前に投げたドーナツ生地もべちゃっと不時着、鍋に届いてません。彼らの周りには、万が一の油鍋大バクハツに備えて大量の水や氷やマヨネーズ(!!)が置いてあります。この二人、やるなぁ。生活スキル高い・・・

3、ふたりともぜんぜんいそいでない

先ほどの1頁にかけたい時間の長さとも重なるのですが、この絵本の魅力は、彼ら、特にバムの「おおらかさ」にある。
だって今日は日曜日なのです。おもては雨降りなのです。
家の中で、なにをしたって良いのです。うれしいですねぇ。
まあゆっくり本でも読みましょうか、その前にお掃除もして、ドーナツも揚げちゃいましょう、という時間軸で物語は進んでいくわけなのですが、合間にちょいちょいミニトラブルが勃発します。

それでも、です。彼らにはセリフがないので表情で読みとるしかないのですが、バムのだるだるの目元は、ゆるんだままです。けっしてブチ切れたりはしません。
だって今日は日曜日で、時間はたっぷりあるのです。このゆるやかな時間、その豊さが絵本からもわーんと伝わってくる。そうしてこちらの顔もゆるむ、ゆるむ。
安心感って、娯楽を楽しめる大事な要素なのですね。

4、まとめ このふたりって

この作品のストーリー自体は、ものすごーく感動するわけでもびっくりするわけでもないのです。でも、やっぱり何度も、ひらいてみたくなる。
それはやっぱり彼らを、好きになってしまうからです。
この二人に会いたいがために、この家に遊びにいきたいがために、ひらく絵本。
そういう一冊です。
ここまで考察してきて、わたしの中では、バムは結構なおじいちゃん(おばあちゃん?)で、外でトラブルに巻き込まれていたケロ(日照り続きでカラカラケロになりかけてたとか)を救い出して、二人で住むことにした、という線が濃厚になってきました。
助けたつもりが、ケロの存在そのものにバムも救われる、というような。
なにはともあれ、この二人の動向が今後もとても気になるので、他のシリーズも読んでみたいと思います。


見返しもちゃんと見返しましょう


☆今日のとじこみ付録
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