ルクセンブルグ・フランがないっっ。だけど頑張った一人旅。 その3
教えられた通りに大通りを歩くけれど、どこまで行っても郵便局らしきものは、現われない。
実は私は、筋金入りの方向音痴。教えられた道順も左や右、北や南のように対になっている言葉を覚えることが、とても苦手。日本語で言われてもそんな調子なのに、英語なわけだからさらにハードルが高い。
買いすぎた戦利品が重い。
ストラップが、ずしんと肩に食いこむ。
外はまだ明るいけれど、もう7時か8時にはなっていたと思う。そのことを心配して、あらかじめ男性に、
「でも、この時刻じゃもう郵便局は閉まっているのでは?」
と聞いてみた。
その後の彼の答えは正確には理解できなかったけれど、
「いやいや大丈夫。そこは本局だから」
というような内容だったと思う。
どのみち探せないのなら、たとえ開いていても、辿りつくことはできない。
郵便局はあきらめた。
とぼとぼとルクセンブルグ駅への道を戻る。
私はこの時30代前半だったけれど、日本人は若く見られがちなので、現地の男性には、若い女性の一人旅と思われたようで、何人もギラギラした瞳を隠そうともせずに寄ってくる奴がいた。
車の鍵をちらつかせる男もいる。
「あの車に乗っちゃったら、おしまいだなー」
と思う。
けれども、しつこく言い寄ってはこないので、比較的安全ではあった。
ルクセンブルグは、本当に小さな国だ。面積にして2,586k㎡。神奈川県より、ちょっと広いだけ。
このターミナル駅の周囲は、当時はほとんど何もなかった。
このような非常事態でも、私がけっこう落ちついていたのには、理由があった。
実は、琴美ちゃんの最寄りの空港は、ドイツ国内ではなくルクセンブルグ空港だった。私たちは、日本からこの空港に降り立ち、車で迎えに来てもらった。
だからここまで来れば、連絡さえ取れれば迎えに来てもらえる距離だということがわかっていたからだ。
とにかく電話さえかけられれば・・・。
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