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目の前に有間皇子の碑が突如現れ、なぜ? と首を傾げたあの日。

 昨年の秋、和歌山県の白浜を歩いていたら、どーんとこんな碑が。思わず足を止める私。

 高校の時の古文で、
「家にあらば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る」
 という万葉集の彼の句を習って以来、その悲しい人生に理由もなく感情移入してしまった私には、素通りなんてできない。

 天皇への謀反計画が発覚し、処刑されてしまったのは19歳の頃。
 辞世の句とも言われているこの歌は、「家にいたなら、茶碗に盛る飯を旅に出ているので(罪を問われて護送されているので)こんなふうに椎の葉に乗せて食べなければいけないのだなぁ」と嘆いていると教わったので、まだ少女だった私は、諸説あるけれど中大兄皇子に嵌められたのなら、本当にかわいそうだな、と心底思っていた。



 で、どうしてここに碑が? と不思議だったけれど、有間皇子は白浜温泉の名を広めた恩人なんだって。日本三大古湯に数えられてる白浜温泉は、そもそも有間皇子が気に入って斉明天皇に知らせたらしい。
 有間皇子さま、知らせてくださりありがとう。そのお陰で、私もこの地に導かれて、素晴らしい泉質の温泉に出会えた。
 日本三大古湯とは「有馬」「道後」「白浜」の3つだけれど、数年かかってコンプリートした私。とりわけ、「白浜」の泉質は私の好み。


 もう目の前は、白波たちまくる海! という夢のようなロケーションの「崎の湯」は、日本最古と謳ってる。諸説あると思うけど、ここが有間皇子が入って気に入り、斉明天皇に伝えたために有名になったと言われてるよ。        女湯は、高低差のある3つの湯舟が自慢で、まとわりつくようなお湯がやさしくて、長居しちゃった。そもそも、白浜に行こうと思ったのは、ここに行きたかったからで、だったら最初から有間皇子が入ったことを調べてから行け! 突如現れた碑に驚くな! って話だけれど、結果その思いは繋がったんだから、良しとしよう。うん。


 子供が集めたのかな? 貝殻がきれいに並べられた砂浜。波に削られたのもいくつか見受けられるけど、それも時間が作った素敵なアートだよね。
 だけど、いくらなんでも万葉の時代から流れついた物はあるわけもなく、有間皇子が歩いていた時代は、遠い遠い昔。
 けれど、温泉は今もこんこんと湧き続けている。
 感謝。

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