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Keep in touch は、もう約束だよ。石橋凌さんに乾杯。その6

 そう言えば。
 一回目の解散ツアーのラストも、代々木だった。この時の精神状態は、あまりよく覚えていない。
「湿っぽくしたくない」
 と言っていた凌さんが、最後の最後に歌い残した曲は、「明日へのBOOGIE」。皆を熱狂させた往年の名曲「魂こがして」でも、会場全体が皆のジャンプが原因で揺れる「BOYS&GIRLS」でもなく、結果的にラストアルバムになってしまった「Sympathy」からの一曲だった。まだファンの間でも浸透していないから、微妙な雰囲気が漂っていた気がする。
 でもこの期に及んでも「明日」を見つめている凌さんのことを潔いと思った私は、それを全面的に受け入れた。
 それから数年は、役者に専念。歌を封印していた凌さんだったけれど、7,8年経った頃に、ソロとして麻布の「Romanisches Café」で歌うという情報を得て、喜びいさんで出かけて行ったけれど、この時も舞い上がっていて、細かいことはよく覚えていない。
 松田優作さんの「天国は遠くの街」を
 「♪ここから天国は遠くの街 その門を叩いたものは二度と帰らない~」
 と優作さんのことを思いながら、気持ちをこめて歌いあげていたことだけは、ものすごくよく覚えている。
 

allcinemaさんから拝借の画像


 乾杯のくだりでも紹介した「さらば相棒」という曲は、なんとピンク映画のタイトルにもなって主演も凌さんだった。1982年のこと。
 ディレクターズカンパニーという今はもう伝説となった映画監督のユニットの旗上げ作品の一つ。「ピンク、朱に染まれ!」というキャッチコピーもかっこいいし、監督は宇崎竜童さんだったのだけれど、まごうことなきポルノ映画。配給もその扱いだったので、とても一人で観に行く勇気などない私は、彼氏(今の夫だけれどね)につきあってもらい、蒲田のその手の映画館に行った。
 夫もARBのファンだったからつきあってくれたけれど、そうでなかったら実現できなかったかもしれない案件。
 場内は禁煙なのに、おじさんたちは平気で煙草を吸っていた。彼らからすると、私たち以外にも数人いたARBのファンの方が異邦人だったはず。せっかくのお楽しみの時間を邪魔して悪かったな、と今では思う。
 何しろ私たちは、凌さん始めメンバーの(メンバーも出演いていた)ぎこちないセクシィなシーンに声をあげて笑っていたのだから。



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