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あの世の入口で語られるそれぞれの人生『幽都酒馆』

※中国語のみ。
『幽都酒馆』は死後の世界の入口「幽都」での一コマを切りとった短編アドベンチャー。自分がなぜこの場所を訪れたのか覚えていない主人公・月(yue)は、しばらくここで人々の話を聞きながら記憶の鍵を探すことにした。クラシックが流れるバーで生前の思い出や後悔に耳を傾け、彼らの行く末を見とどけるあの世の無常と人情。

ツクール製の一幕もので、章ごとにここに来ては去っていく人々の物語を聞くオムニバス形式になっている。バーのような装いの幽都には天命尽きた人がやってきて、そこで自分は死んだのだなと気づく。おぼろな記憶から生前の出来事を語っていくと、その死(あるいは生)にまつわる様々な思いがみえてくる。

話を聞きながら時折、なぜそのような状況に至ったのか?ということを推理していく場面もある。またこの場所は審判の場でもあり、自らの行いを振り返った人たちは過去を抱えたまま、その罪に応じて浄土や次の生にむかう。すでに起こったことは変えられないが、幽都の住人は行きかう客人をあたたかく迎え入れ、話に耳を傾けてくれる。

人生に後悔は尽きることなく、判決は例外なく下される。でもこうして誰かと人生を共有することで、人々はその先へと歩いていく。憂き世のさだめと共に生きる人たちを描いた印象的な一編で、ひとつの考えが美しく表された短編佳作。

ちなみに作中のBGMはいずれもクラシック。ネタバレになるので曲目は間をあけて書いておく。






( ・・)_旦~~







モーツァルト きらきら星変奏曲
 モーツァルトによるフランス民謡「ああ、お母さん聞いて」の変奏曲。
バッハ ゴルドベルク変奏曲
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハが書いたチェンバロのための変奏曲。不眠症の伯爵のため、ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクがこの曲を演奏したという逸話のためにこの名がある。
ハイドン ピアノソナタ 第10番(6番) ハ長調
 古典派の様式を確立し交響曲の父と称されるハイドンは、長い生涯でチェンバロからピアノフォルテ(ピアノの祖型)へと移行しソナタ形式が生まれる時代を生き、多くのクラヴィーア・ソナタを書いた。
ショパン ピアノソナタ 第2番「葬送」
 第3楽章の「葬送行進曲」と、シューマンによる「彼の最も狂気じみた4人の子供を無理矢理一緒にした」という批評で有名なソナタ。