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「4人の侍 VS ATM」アフリカ大陸縦断の旅〜タンザニア編㉔〜

 2018年9月12日夜22時半頃、面倒臭そうな態度のおじさんにパスポートを渡し、難なくタンザニア出国を済ませた私たち。続くはザンビア入国。デモ活動があると聞いていたので、困難になることが予想されましたが、そんな事実は何処へやら。陽気なおじさん3人に元気よく背中を押してもらい、すんなりと出入国手続きが終了。ザンビアの通貨を持ち合わせていないことは大きな問題ではありましたが、とりあえず明日のバスに空席があるかどうかを確認するため、私たちはバスターミナルで交渉を開始したのでした。

 2社目、同じような太ったおじさんと、その周りで立っている細いおじさん数人の元へ。

「ルサカまで行きたいんですが、明日のバスって空席あります?」

「明日ねー、早朝4時の便なら空いてるよ。」

 疲労による睡眠欲、それにあの快適そうなベッド。しかし、ここで待ちぼうけを喰らったところで特にすることはなく、無駄に生活費がかかってしまうだけ。4人で話し合った結果、4時の便でルサカに向かうことに決めました。後は金銭面次第。

「いくらかかりますか?」

「1人1200円だな。」

「カードで払えますか?」

「無理だ。現金で支払ってくれ。」

 ダメ元のカード交渉もあっけなく終了。青空砂利バスターミナルを考えれば、当然のことでした。あるか分からない近くのATMを探してクワチャを引き出すか、1200円に満たないタンザニアシリングを換金して、値段交渉の末どうにかチケットを購入するか。胸のポーチに入った、なけなしの残金を何度も確認しながら、選択を悩んでいました。すると、今まで黙っていた細いおじさんたちが、私たちに声をかけてきました。

「現金は持ってるのか?両替してあげるよ。」

 どうやら細い方のおじさんたちは両替商らしく、彼らの手にはおそらくクワチャの札束。それは暗がりでも分かるほど、しわくちゃで黒ずんでいました。どう考えても信用に値しない金の汚れ方。それでも一応は、レートを尋ねてみることに。

「1000シリングで何クワチャになる?」

「そうだな。60クワチャでどうだ?いや、おまけで65にしてあげてもいいぞ。」

「は?ふざけんなお前。そんなんしていらんわ。」

 タンザニアシリングで1000円あったにも関わらず、ザンビアクワチャに換金すれば650円(しかも、これでおまけ)だという細い奴ら。国境の両替商は足元を見てくるため、レートが最悪であるとは知っていました。彼らにとってはこれが通常レートであるかもしれませんが、しかし、今の私たちにとってこの差は死活問題。

「この辺りでは良いレートだぞ。」「換金しろよ。」「今しないと後で来ても50にするぞ。」

「なんやねん!カス!引っ込んどけや!」

 今換金したところで私たちが持っているシリングでは、バスチケット購入には足りない。その上、おそらくレートは最悪。仮に換金をした後、バスチケットの値段交渉が上手くいかなければ、完全に私たちの損。上手くいったとしても、全クワチャをバス代に使ってしまえば、バス乗車以降、次のATMまで無一文。

「この近くにATMなんてないぞ。」「換金するなら今のうちだ。」「バスに乗れなくてもいいのか?」

 断固拒否を貫く私たちの姿勢にも臆することなく、しつこい粘りを見せてくる彼ら。

「埒明かんな。この会社も信用できん。」

「別のところ探しましょうか。」

 こうして2社目とも話の折り合いはつかず、気付けば日付を跨ぐ頃。相変わらず真っ暗な空間からは、到着当初に比べて人の数が減っていました。

「ATMないって言ってましたね。ほんまかどうかは知らないですけど。」

「でもあの感じやと、換金はやめといた方がええな。」

「ここからルサカまでのバス代は、たぶん平均1000円前後って感じだね。」

「まだ当たってないバス会社もそのぐらいですかね。てことはやっぱり、ATM探すしかないですね。」

 バスターミナルに残ったわずかな人を頼りにATMの場所を聞いて回る私たち。「あっちにあるよ。」「こっちにあるよ。」「いや、ATMなんてないよ。」「換金する?」などなど、様々なデタラメ解答を乗り越えて辿り着いたのは、国境の外れにあるATM。先ほどより街灯も少なく、寒い場所に設置されたボロくて古そうな機械。こんな時間に利用しに来る人なんているはずもなく、使うなと言わんばかりに真っ暗な画面。

「いやぁー、吸い込まれそうだね!!!笑」

「マジで怖いっす!!!笑」

 ケニアとタンザニアで1枚ずつカードがATMの餌食になっているS氏。残るカードは1枚という状況。そして、もともと1枚しか持ってきていないアホな私たち。

「・・どうします?他探しますか?」

「でもここしかなさそうじゃない?んー、ここかー。ここで引き出さないとだよね。」

 目の前にある3台のATMと睨めっこ。しかし、どれも全く同じ、空腹の表情。

「いや、この中の少なくとも1台は大丈夫のはずだよ。それを選べるか、運次第。」

「うわぁー、どれにしましょうか。」

「2人の入れる前に、俺のカードで試してみたら?ATM選びはS氏に任せるよ。嗅覚1番働いてるやろうし。笑」

「Y氏マジすか?そんな人の金で博打するような真似していいんすか!?」

「まぁこのカードそんな金入ってないし、吸い込まれても残り3枚あるし。2人はカード失なったら、もう帰国ルートまっしぐらやん。」

「Y氏ーーー!お言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます。」

 こうしてS氏の第六感を信じてど真ん中のATMを選択し、Y氏のカードを使って現金を引き出す覚悟を決めました。

 そして私たちは、震える指で真っ暗な画面に触れたのでした。

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