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「いざ上陸。滝の国 ザンビア」アフリカ大陸縦断の旅〜ザンビア編①〜

 2018年9月13日深夜1時頃、国境からザンビアの首都ルサカへ移動するため、バスチケットを手に入れようと奮闘していた私たちでしたが、すでに席がないことや金銭面の問題で、1社目、2社目、共に交渉失敗。バス代とは程遠い有り金ではどうしようもなく、現金を手に入れるため、ATMに向かったものの、どう見ても信用できない姿の汚い機械が3台。話し合った結果、これまでに2枚のカードがATMの餌食となっているS氏の嗅覚のもと1台を選択し、Y氏のカードを使ってお引出しを試みたのでした。

 パッと明るくなる画面に、利用可能な機械であることを知って、ひとまず安堵。Y氏のカードをゆっくりと挿入し、現金を引き出す手続きを開始。

「あっ、Y氏、そういえばいくら引き出します?」

「もー分からん適当!4人分のバス代支払えたらそれでええやろ!」

「あ、えーっと、1クワチャが10円ぐらいやから・・えーっと・・」

「何でもいいから押せって!」

 時間切れです、という文字と共に現金もカードも出てこない未来を避けるため、あわあわする私たち。

「やばいよ!早くしなきゃ!」

 そう言って500クワチャ(約5000円)を選択するS氏。

「いや、めっちゃギリギリやん!」

「ごめーん。」「もー後は祈るだけ。」「ほんまに頼む。」

 0コンマ数秒後、真っ暗の中、静まり返った空間に突如として現れた、ATMが札を数える音。

 ウィーン、ドゥドゥドゥドゥ、ウィーン・・・

 加速していく機械音。その方向を黙ってじっと見つめる、液晶のライトに照らされた4人。

 カシャ。

「おぁぉー!金出てきてるぞ!」「ちゃんと500あるか?」「カードは?」

 イケメンな鳥と100の文字が印刷された、今にも破れそうな札が5枚。

「よしよし、これでとりあえず移動でき、

 ピーッ、ピー。

 ATMから嫌そうに出てくるY氏のカード。

「よっしゃあああ!助かった!俺のカード無事やん!」「マジで良かったぁぁ!」「S氏のATM選びのおかげですね!」「あのカード2枚の犠牲の上に成り立ってる、と言っても過言ではない。」

 一同大盛り上がり。

「これ俺たちもいけるんじゃない?」

「このまま一気にいきましょう!」

 間髪を容れず、S氏と私は同様の操作をし、同額の500クワチャを入手。そして引っこ抜くようにカードを財布に戻し、見事にATMの恐怖に打ち勝ったのでした。

「2人とも絶対ルサカ着いてから引き出した方が良かったやろ。バス代は足りてたんやし。」

「ほんまですね。何か勢いでつい。」

「せっかくY氏が身を削って引き出してくれたのに、何かごめん。」

 興奮と安心で変に前のめりになっていた心を落ち着かせ、バスターミナルに戻った私たちは、まだチケットが買えそうな3パラソル目に向かいました。

「今日の朝にルサカ行きのバスに乗りたいんですが、まだ席空いてます?」

「そうだねー、ちょっと狭くなるけど空いてるよ。」

「じゃ、お願いします。」

「んーまぁ1人100クワチャ(約1000円)でいいよ。」

 ここに来て格安のバス会社。話を聞けば、結構小さなバスらしく、さらに補助席に座ってもらう、という理由で安くしたとのこと。出発は午前4時、集合時間はその30分前。現在、すでに午前1時半を回る頃。

「ルサカまで何時間かかります?」

「大体半日ぐらいだね。」

 あのふかふかベッドで爆睡する夢は儚く散っていき、バスでの12時間補助席耐久睡眠が確定したのでした。

「あの雰囲気、いつにも増してバス移動過酷そうですね。」

「まぁー仕方ないよね。安いし、チケット買ったのもギリギリだし。」

「2人とも現金おろして正解やったな。俺の現金だけやったら4人分払って残り100クワチャ。12時間、4人で1000円はきついやろ。」

「バス降りてからの移動費もありますしね。」

 再度国境を跨ぎ、タンザニア側の宿に帰った私たち。時刻はすでに午前3時。

「え?3時?さっきまで2時ちゃいました?」

 確認すると、どうやらタンザニアとザンビアの間には1時間の時差があるようでした。

「ザンビアのバスターミナルに3時半、ってことは、えーっと、」

「タンザニアの4時半だね。だからここを4時過ぎに出発すればいいんじゃない?」

「そうやな。ザンビアでバス予約してるから、さすがにザンビア時間のことやろ。タンザニア時間やったら、もう今から出なあかんけど。」

 時差に惑わされながらも、ザンビア時間での出発を信じた私たちは、ホテルで休憩することに決めました。ふかふかベッドで眠りたい気持ちは山々でしたが、寝坊を恐れて目を閉じることはなく、それぞれ動画を見たり日記を書いたり過ごすこと1時間。早くも出発の時。せっかくの快適な宿にも関わらず、心身共に休めることができないまま、重たい体に重たい荷物を背負い、さらに再び国境を越えました。

 私たちが離れていたわずか小一時間の間で、バスターミナルは荷物と人で溢れていました。チケットを購入したパラソルに向かい、スタッフにバスを案内してもらう私たち。

「おい、マジかよー。これに乗るん?」

「いやー、これに12時間か。普通に嫌やわ。」

 アフリカに来てから1番の劣悪環境バス。30人乗りぐらいの小ささ、黄色の塗装のせいで、際立つ大量の黒い汚れ。荷物用の下にあるトランク部分は壊れて使えないらしく、乗客と大量の荷物で膨れ上がる車内。清掃の概念は失われているのか、草木やらゴミやらが足元に散らばっている始末。それゆえに、独特な臭さが充満していました。もちろん冷房設備やWi-Fi、充電できる場所はありません。今にも崩れそうな補助席に座り、膝にバックパックを抱える私たち。

「狭いとは言ってたけど、それ以外にも言うことあったやろ!」

「これで12時間はきついね。タンザン鉄道恨むわ。」

「あの時ビーフ選んどきゃ良かったわ。何か腹たってきた。」

「あー、どれもこれもタンザン鉄道のせいや。」

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