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煮魚について考える『サバの生姜煮』

焼き魚と比べてイマイチ人気のない煮魚。その理由を考えながら新しい煮魚のレシピを考えます。ちなみに煮魚は日本料理屋でもほとんど作らない料理の一つ。どちらかというと家庭料理です。焼き魚よりも作り置きが利くのが特徴。
煮魚を作るとき、まず考えるべきは甘みの選択肢です。高級につくるなら砂糖ではなくみりんで甘みをつけます。砂糖は単純なショ糖の甘さですが、みりんは様々な糖類が混ざった上品な甘さ。さらにメイラード反応に由来した香気成分が魚の臭みをマスキングしてくれます。しかし、みりんは高コストなのも事実。

鯖の生姜煮(二人分)
 鯖 切り身 二きれ
 生姜 二かけら
煮汁
 醤油 大さじ2
 メープルシュガー 大さじ4
  酒 2分の1カップ
 昆布水 2分の1カップ
  塩 小さじ2分の1

見慣れない材料が2つ入っているか、と思います。まず昆布水について。

昆布を水に浸けて冷蔵庫で一晩置いておいたものです。昆布に含まれるグルタミン酸は鯖のイノシン酸との相乗効果をもたらし、旨味を何倍にもアップさせます。なければもちろん水でもかまいませんし、一欠片の昆布を煮汁に入れていただいてもOK。昆布茶を使うという裏技もありますので、時と場合に応じて。

もう一つ目新しい食材はメープルシュガー。このレシピを考えるにあたり、焼き魚のほうが煮魚よりも人気がある理由は『香ばしいから』ではないか、という仮説を立てました。香ばしさの成分がメイラード反応によって生成されるのはご存知の通り。

メープルシュガーは通常の砂糖と違って、製造時にメイラード反応を経ているため香気成分が豊富。また、メープルシロップの香気成分である「フルフラール」や「ソトロン」は醤油にも含まれている香り成分なので、醤油味との相性が非常にいいのです。通常の煮魚にはないメイラード反応による香りを加えることで、新しい煮魚を狙います。

メープルシュガーがなかったら、メープルシロップでももちろんOKです。(もちろん、なければ砂糖でも美味しくできます。ちなみにメープルシュガーの糖度は砂糖と同じなので、砂糖に置き換える場合も分量はそのまま上白糖に置きかえてもらって大丈夫です。このレシピの良さは出ませんが、、、)

鯖は表面をキッチンペーパーなどで拭いてください。サバには写真のように切れ目を入れておきます。鮮度が悪い場合は霜降り(湯で洗う)が必要ですが、今回はそのまま使います。そのままでも手順を守れば結構平気ですよ。

生姜は鍋の底などで叩いてから荒く刻んでおきます。これがおいしい。

煮汁の材料をすべて鍋に入れて、沸かします。沸騰したところに魚を入れるのがポイント

煮汁が沸いてきたので鯖を投入。このとき、魚は重ならないように。適切な大きさの鍋を選ぶことも大事です。

皮目を上にして、煮汁を表面にかけます。ガスの火は強火だと思いますが、こ こではじめて火を少し弱めて中火にします。

落としぶたをして、中火で8分間ぐつぐつ煮ます。火が強いかな、と思われるかもしれませんが平気です。落としぶたがなければアルミホイルやコピー用紙などで、代用ができます。キッチンペーパーでも 原理的には可能ですが、水分を吸ってしまうので、ちょっともったいないかも。この落とし蓋というのも料理屋さんでは使わないので、家庭料理ならではの道具ですね。(穴子を煮るときに経木を落とし蓋代わりに使うことはありますけど)

8分経ちました。今度は強火にして煮汁を詰めていきます煮魚は魚が崩れて、、、という人がいますが、ここまでほとんど魚には触っていないのがわかりますか?  魚に触らなければ崩れるリスクは減ります。

煮汁をかけながら煮ていき、照りが出てきたところで火を止めます。 煮汁の残り具合は好みですが、とろみがついてきて照りがでてきたらいいでしょう。もしそれでも煮汁が多いようなら(途中の火が弱いとそうなります)魚をとりだしてから煮詰めてもかまいません。

 できあがり。このように煮汁が少なくなるまで煮詰めていく技法を〈炊き上げ〉と言います。この場合は表面の煮汁で中身を食べるため、煮汁がなかまで浸透してなくても問題なし。あしらいは焼き葱です。適当な大きさに切った葱を小さじ2分の1の油を入れたフライパンで焦げ目がつくまで焼きました。

魚の煮付けはスーパーで切り身を買ってきて、家に帰って煮はじめれば15分ほどでできあがります。これをもっと高級につくろうと思えばメープルシュガーではなくミリンを使うということになるでしょう。みりんはメイラード反応によって生成された香気成分が多く含まれていますのでよりおいしくなるはずですが、反面身が締まりがちになるというデメリットも。ご飯のおかずにするならこんな風にメープルシュガーを使うか、砂糖で煮るのがおいしいかもしれません。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!