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ローストチキン、新しい縛り方

クリスマスにローストチキンを作ってみよう、という方もいるか、極上のローストチキンを作ろうと思ったら、前日からの準備が必要です。鶏肉は焼く前に砂糖が入った塩水に漬けたほうが上手に焼けます。これをブライニングといいますが、これによって加熱中に失われる水分を補えるので、肉がしっとりとします。

〈一日目〉

まずは鶏をしばりましょう。縛る目的は形を整え、火の入り具合を均一にすること。基本的な縛り方は別の機会に見せますが、今回はちょっと変わった縛り方をご紹介します。北京ダックの縛り方をベースにアメリカ、シアトルにあるChefstepsチームが考案した縛り方です。これ教科書に載っていない縛り方なので、料理の先生の前では披露しないほうがいいかもしれません。

その前に首ズルを落とす必要があります。首の骨を手で引張り

根本近くに包丁を入れます。

あとは首を引っ張りながら左右に動かします。

そのうち関節で切れます。

肺と食道が残っていることが多いので、お腹のなかをチェック。

手で引っ張り出しましょう。

次に鎖骨をとりだします。指で触って骨の位置を確認し、包丁で肉を切ります。

あとは手で引っ張り出せばOK。

これが鎖骨です。鎖骨は残しておくパターンもありますが、とったほうが切り分けるのが楽です。

さて、縛っていきます。まず手羽のあたりに紐を通します。ここまではわりと基本通りですが、、、

ここからは学校で習う方法とは違います。胸肉の前でクロスさせます。

足元に持っていって、またクロスさせます。胸の前で首の皮を抑え、胸肉の皮を全体に引っ張ります。この工程によって胸肉の肉汁が首の周りから溢れるのを防ぎ、胸肉の皮をパリッとさせます。

胸肉の皮に張りが出てきたら、もも肉、つまり膝の下を通して、、、

上に持ってきて、クロスさせます。

ぎゅうっと引っ張るともも肉を糸で持ち上げるような形になります。もも肉の膝が伸びます。

あとは肛門のあたりで縛るだけです。

こんな感じ。

この縛り方のメリットは胸肉の皮が完璧に伸び、もも肉のあいだに隙間がきちんとできること。ローストチキンの難しいところは胸肉ともも肉の火の通り具合が異なる点ですが、この縛り方であればもも肉と胸肉に同時に火が入る、というわけ。

ローストチキンをつくっていきます。まずはブライニング(塩水処理)から。

水  500cc
塩   25g
砂糖  10g
レモンスライス 1個分

混ぜ合わせます。

袋に鶏肉とブライニング液を入れて、6時間以上漬けます。塩水に肉を漬けると、筋肉繊維の構造が破壊され、収縮性タンパク質の一部が溶解し、筋繊維自体が柔らかくなります。そして、塩とタンパク質が作用しあって、筋細胞内に多くの水分が吸収されます。水分量を増加させることによって、この後の乾燥工程を経てもプラスマイナスでジューシーさが保たれる、というわけです。

時間になったら引き上げて、キッチンペーパーで拭きます。

さらに冷蔵庫に一晩置き、皮の表面を乾かします。

〈2日目〉

一晩経った状態がこちら。皮が完璧に乾いているのがわかります。皮がかりっとしないのは皮に水分が残っている場合ですが、きちんと乾かすことでパリパリに焼き上がります。北京ダックなどと同じ工程ですね。これを100度のオーブンで1時間30分加熱します。目標の中心温度は60℃。

125℃以下のオーブンで加熱すると鶏肉の表面が揮発する水分の気化熱によって冷やされ、70℃前後で加熱することになります。低温長時間で加熱することで肉に含まれるタンパク質分解酵素が働き、肉がやわらかくなり、アミノ酸が分解されペプチドが増えるので、いわゆるコク味が増す、などのメリットがあります。

1時間30分経ちました。中心温度をはかってみたところ57℃。10分間休ませます。目標の60℃まではやや足りませんでしたが、ここから仕上げの加熱に入るので心配は無用。

鶏肉の表面にバターかオイルを塗り、最高温度(今回は250℃)に設定したオーブンで10分間焼きます。

焼けました。表面はパリパリです。もも肉のあたりに焦げ目が薄いのはバターの量が若干少なかったためです(すみません)

もも肉を切り分けますが、肉汁が溢れてきます。この肉汁で皮が湿らないように注意してください。もも肉の両側に包丁を入れ、皮を切ります。あとは肉を引っ張るようにして出した関節を切ればもも肉が取り出せます。

胸肉の切り分けはこんな風に中心の骨を避けて、包丁を入れます。皮がパリパリなのが写真からもわかるか、と思います。

あとは胸肉を剥がせばOK。

ジューシーな仕上がりはまるごと焼いたから。焼くだけなのでスーパーシンプルですが、ごちそう感は出ます。この撮影、かなり前にしたので、ちょっと写真の質が良くないですね。今度、もう少しわかりやすくしたバージョンを撮影して、アップします。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!