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インゲンのサラダ、マスタード風味

夏が旬のインゲンマメ。風味化合物が脂溶性なので、焼くよりも茹でたほうがベターの野菜です。今日はインゲンのサラダをつけ合わせに、カジキマグロを焼いて食べます。

インゲンのサラダ(つけ合わせとして4皿分 サラダとしては2人前)
いんげん 100g
ラディッシュ 30g
グレープシードオイル 40g
白ワインビネガー 10g
マスタード 10g

いんげんはよく洗い、包丁で硬い部分を切り落とします。

その後、斜めに三等分しました。ラディッシュは2mm厚にスライス。このインゲン、昔の品種には硬い筋がありましたが、現在流通しているものはやわらかくなったのでその必要はなし。

沸騰した湯で、いんげんを2分間、茹でます。この後、水に落として色止めをするので、塩を入れる必要は特にありません。

インゲンを茹でる時に〈塩を入れるべきか〉という問題は、人気シェフ、ヘストン・ブルメンタールが料理と科学の関係性について目覚めるきっかけとなった出来事だそう。 塩を入れて茹でると野菜の青味が増す、と昔から言われていますが、彼は試しに塩を入れないで茹でても色がまったく変わらなかったことに疑問を持ち、料理好きの科学者に相談しました。

塩を入れると沸点が上がると言いますが、塩を少々入れたくらいでは沸点はほとんど上がりません。沸点には気圧の影響のほうが大きいのです。味は冷水につけてしまえばつきません。

野菜を茹でると、細胞のいくつかが破裂し、その結果様々な有機酸が生じます。これらの酸の水素イオンが、緑色の元となるクロロフィルのマグネシウムイオンと化合し、フェオフィチンという化合物に変化します。これが野菜の色が悪くなる原因です。塩を加えることで細胞内からクロロフィルが溶け出しにくくなり、さらに水 素イオンが占める場所にナトリウムイオンが入りこむことで、クロロフィルを安定化させる、というのが従来の考え方でした。

実際には「少々の塩」程度では効果はなく、塩によってクロロフィルを安定化させるためには、最低でも3%以上のかなり濃い塩分濃度の水を用意する必要があるようです。フードライターのハロルド・マギーは「野菜を茹でる時、3%の塩水を使えば、早く茹で上がり、緑色も保たれる」としていますが、インゲンを茹でるのに3%濃度の塩水は塩気が強くなりすぎるので現実的ではありま せん。また、塩を入れると早く柔らかくなってしまい、いんげんの歯ごたえを残すことが難しくなります。したがって塩を入れる必要はないのです。

残り30秒になったら、ラディッシュも投入して一緒に茹でてしまいます。ちなみにラディッシュの味は水に溶けだすので厳密には茹でないほうが美味しい野菜です。

冷水にとって色止めをします。

水気を切っておきましょう。

さて、ドレッシングです。鍵になるのはディジョンマスタード。インゲンにマスター ドは好相性です。

ドレッシングは基本的に油3と酢1(油4と酢1の人もいますが)塩、胡椒を混ぜ合わせてつくります。このとき、酢に油を混ぜるべきなのでし ょうか、それとも油に酢をいれるべきなのでしょうか。料理人のなかには頑なに油に酢を入れるべきだ、という人もいますが、基本的には酢に油を加えていったほうがいいでしょう。なぜなら油に塩は溶けないからです。ジョエル・ロブションは「まずは酢に塩を充分に溶かす。ほんのわずかに酢を温めてもよい」としています。

計りを使うといちいち小さじや大さじで分量を図るよりも早く作業ができます。マスタードと酢、塩、胡椒を混ぜ合わせます。

そこに油を少しずつ加えて混ぜあわせていきます。マヨネーズをつくるのと同じ要領です。油を混ぜていくと懸濁状態になりますが、時間を置くと分離してしまいます。ここでいい働きをするのがマスタード。マスタードには種に由来する界面活性剤が含まれており、エマルジョンを形成します。ただし、マヨネーズのように安定した状態ではないので使うたびに撹拌する必要はあります。

乳濁液が形成されました。これはマスタードが多い分量で、インゲン用のビネグレッ トソース。葉野菜などのドレッシングには『(香りの強い)マスタードは入れるべきではない』というのはジョエル・ロブションの主張ですが、さすがの意見です。

大さじ1のソースで和えます。この時、ボウルは冷たいものを使うとオイルの粘性が増し、よく絡みます。ボウルの縁からまわすようにして、ソースをかけ、野菜に直接、かけないようにすると均一に混ざります。

優しく和えましょう。混ぜるときは優しく、ボウルにソースがたまるようでは多すぎます。これでインゲンのサラダは出来上がり。

塩、胡椒したかじきまぐろをフライパンで焼いて......。

タプナードを載せました。他にもこのインゲンサラダは焼いたラム肉、豚肉などにも よくあいます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!