見出し画像

謎野菜シリーズ『ヤーコンのソテー』

謎野菜シリーズですが、今回は知っている人も多い『ヤーコン』を取り上げます。『ヤーコンなんて道の駅でよく見かけるよ』という人もヤーコンの特徴や性質については意外と謎では。

ヤーコンはキク科の野菜。日本に入ってきたのは1985年と意外と最近です。茨城大学農学部や四国農業試験場(現在 農研機構近畿中国四国農業研究センター)が中心となり、品種改良や栽培特性の研究がされています。

ヤーコンが一般流通で広く出回らないのはあたらしい野菜は消費者が手に取りたがらない、という理由もありますが、水分含有量が多い割に皮が薄く、収穫後の貯蔵が難しいこと、輸送時の衝撃に弱く、外観が傷つきやすいことなどが挙げられます。

ヤーコンの保存は土がついたまま、新聞紙に包み、さらにビニール袋に入れるのが原則。冷暗所、野菜室で保存するのがいいのですが、とにかく乾燥に弱い野菜なのでビニール袋には入れておく必要があります。きちんと保存すれば1ヶ月以上は持つはずです。

見た目はさつまいもみたいですね。

断面はオレンジ色。サクサクとした感じで包丁を入れても楽しい野菜です。かじってみるとまず感じるのは強い甘さ。食感は大根に近く、サクサクしてますが、まるで果物の柿のような甘さがあり、ナシのようなジューシーさがあります。欧米ではなしとスイカをたしたよう、と評されているそう。

この甘みは果糖とフラクトオリゴ糖に由来します。フラクトオリゴ糖は健康に有用として注目される成分。ヤーコンはこの甘みを利用して、ジュースにも加工されます。

長期間保存するとフラクトオリゴ糖も減少します。フラクトオリゴ糖を分解する酵素が含まれているためですが、その分解産物として果糖(フルクトース)が増えるので、甘みが強くなるのです。つまり、健康を意識しすぎないのであればヤーコンは野菜室などで少なくとも10日以上は貯蔵してから食べるのがベター。

食べてみてえぐみを感じたら塩水や酢水に浸して、アクを抜いてから使うのがセオリーです。長く付けすぎると糖が抜けるので、頃合いを見極める必要がありますが、適正な時間などの研究はまだ進んでいないようです。

また、そのままミキサーにかけるとポリフェノール=酸化酵素が働いて褐変が進み色が黒くなってしまいます。それを防ぐにはレモンなどのビタミンCを加えて、参加を防止する、あるいは80℃以上に加熱して酵素を失活させる必要があります。

生のまま食べても良いのですが、今日はソテーにしてみました。フライパンを十分に予熱し、オリーブオイルをしいたのち、弱火に落とし、1cmに切ったヤーコンをじっくり焼いてきます。

8〜10分で裏返して反対側の面も焼いてきます。焼き時間は計16〜20分。

焼き上がったのでフルール・ド・セルと黒胡椒を振りました。食べてみるとシャキシャキとした食感は残っています。ヤーコンはでんぷん質がほとんど含まれていないので、ホクホクにはならないのです。通常、地下茎や根野菜はデンプンという糖が連なった形でエネルギーを貯蔵するのがふつうですが、ヤーコンは糖分という形で蓄えるのがめずらしい。性質としては野菜というよりも果物と考えるべきなのかもしれません。というわけで今日はヤーコンのお話でした。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!