見出し画像

里芋の煮っ転がしの作り方

『里芋の炊き方』はすでに紹介しましたが、今回は「里芋の煮っ転がし」です。

里芋の煮っ転がし
 里芋(皮を剥いた状態で) 600g
 ゴマ油(サラダ油)   大さじ1
 水(または出汁)    300cc
 酒           50cc
 醤油           大さじ2+小さじ1
 砂糖          大さじ2

さて、この煮っ転がし。炊く場合と違って皮の下にあるぬめり成分を利用するために皮を包丁の背でこそぐのが一般的です。

包丁の背やテーブルナイフなどで皮をこそげます。

まあまあ、それなりに剥けますね。この剥き方、実は里芋の鮮度が良くないと難しいので、ここで挫折する人も多いのではないでしょうか。一般にスーパーや八百屋さんで売られている里芋が堀立ということは希、どのようにすれば簡単に剥けるのか。

皮の水分が失われていることが原因なら水を含ませる、という選択肢が合理的な気がします。水に3時間ほど浸けてみました。

スチールたわしやテーブルナイフなど色々とためした結果、無印良品の計量スプーンが一番剥きやすいということがわかりました。厚手のスプーンでもいいと思います。

おお。結構、きれいに剥けます。それでも全部剥くとなると結構手間です。昔の人と違い、現代は忙しい時代。もっと簡単に剥けないのでしょうか。

色々と試してみて一番楽だったのは茹でるという方法です。

水から茹でて5分間。

氷水で冷やします。

あとは濡れた布巾で皮をつまめば簡単に剥けます。もしも剥けなければさらに3分間茹でてみて、また氷水で冷やしてみましょう。長時間茹でると里芋が煮えてしまって煮っ転がしには向かなくなるので、煮すぎないのがコツ。電子レンジもテストしましたが、加熱ムラがあるので茹でた方が楽でした。

里芋の粘り成分が茹でているうちにある程度、流れてしまうので、煮汁が若干、さらっとした仕上がりになり、皮に由来する風味も弱くなりますが、簡単に剥けるのが最大のメリット。というわけで時間がなければ里芋は下茹でして、手で皮を剥きましょう。新鮮な里芋が手に入った場合や時間と心の余裕があれば水に浸けてからスプーンでこそげてもいいでしょう。

いずれにせよ黒い部分が残っていたら包丁で削っておきます。

大きさを揃える作業も重要。小芋ならそのまま煮ればいいのですが、大きい芋は切らないといけません。3cm〜4cm直径くらいになるように二等分、もしくは三等分します。親指と人差し指で輪っかをつくったくらいが目安。

本来であれば里芋の煮っ転がしは形を活かし、小さな芋をまるごと煮込みます。しかし、煮転がしの失敗は里芋が硬いか、煮汁が焦げたの二点。里芋が大きいとそれだけ煮る時間がかかり、長く煮ることで煮汁が焦げたりと失敗の原因となるのでこれくらいの小さめに切ってしまったほうがリスクが減ります。

準備完了。下茹でした皮を剥いた里芋はつるつる。こそいだほうは茶色の色素や皮が多少、残っていますが気にしてはいけません。それが風味になっておいしくなります。

煮汁の材料です。今回は水と酒を使っていますが、水の代わりににぼし出汁や昆布出汁、鰹と昆布のあわせ出汁を使ってもOK。主菜にするなら出汁を、副菜なら水で充分という感じですね。

冷たいフライパンにゴマ油を大さじ1敷き、中火にかけます。

里芋を投入。ちりちりと音が出るまで軽く炒めます。この工程によって味の差が出るようなことはないので雰囲気で大丈夫。

鍋が温まったら水を加えます。

酒も投入。水量はひたひた(素材がぎりぎり浸かる程度)が目安。鍋の口径や芋の大きさが変われば水量も変わってきますので、このあたりは臨機応変ですが少なめにしておいたほうが無難です。

砂糖を投入。今回はグラニュー糖を使っていますが、上白糖のほうがコクが出ます。

醤油もはじめから加えてしまいます。いつもは醤油は最後に加えますが、煮っ転がしの場合、味を含ませるわけではないので最初から入れます。ここで火加減を強火に。

落とし蓋をすると雰囲気が出ますね。素材が動かなくなるので煮崩れのリスクが減りますが、アルミホイルや紙でも同じように落とし蓋にできます。

沸いてきたので火を中火に落としました。ここからタイマーをセットして10分間。小さく切っているので時間はそれほどかかりません。

10分経った状態がこちら。強めの火加減で煮ているので煮汁が減っています。この状態で硬さをチェック。一番大きな里芋を竹串などで差してみて、すっと通ることを確認します。もしも硬ければ水を少し足して、落とし蓋をしてやわらかくなるまでさらに煮ます。

硬さはOKだったので、落とし蓋を外して鍋を振り、焦げに注意しながら強火で煮詰めていきます。この時、芋がころがるので煮っ転がしという名前がついたんですね。

表面に照りが出てきたところで火を止めます。今回は2分ほど加熱しました。仕上げに醤油を小さじ1加えます。最初に加えた醤油の香り成分は揮発しているので補うためです。薄味が好きなら省略してもいいでしょう。

煮汁の量はこれくらいが目安。焦がさないように注意してください。

冬は仕上げに柚子の皮を入れるとおいしいです。

白いところを入れないように皮を剥き、細切りにします。

出来上がり。煮汁はほとんどない状態がベスト。冷蔵庫で三日ほど保存が利くので作って置いてもいいでしょう。

里芋の煮っ転がしは樋口一葉の小説『大つごもり』にも


珍らしき客に馳走は出來ねど好物の今川燒、里芋の煮ころがしなど、澤山たべろよと言ふ言葉が嬉し


という文章があることから、昔からご馳走ではなく定番のおかずだったようです。『里芋の炊き方』の記事では里芋を六方に剥きましたが、こちらはご馳走という感じ。炊く場合と煮っ転がしの最大の違いは皮の下の風味を活かすか、取りのぞくかという点。どちらもおいしいですが、煮っ転がしもいいものですよ。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!