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いちごジャムのポイントは短時間の加熱

いちごのシーズンはざっくりと「いち」月〜「ご」月まで。しかも、今の時期からは小さなジャム用の安価なイチゴが出回ります。ジャム用のイチゴは小粒ですが、露地もの(ハウス栽培ではない)なので、味が濃く、料理やお菓子にするには最適。今日はキホンのイチゴジャムの作り方を解説します。

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巷に溢れているいちごジャムのレシピは大量につくるものが多いですが、今回は1パックでつくります。1パックのいちごはだいたい300gぐらい。ヘタをとりのぞくと270g〜280gが正味の重量です。

ジャムづくりの鍵を握る物質は『ペクチン』です。以前「杏ジャムの作り方」という記事で簡単に解説しましたが、もう一度復習しておきましょう。ペクチンは食物繊維の一種で、植物の細胞と細胞を繋いでいるセメントのような物質です。熟していない果物が硬く、反対に熟していくとやわらかくなるのはこのペクチンの変化によるもの。

ペクチンはそのままでは互いに絡み合って溶け出しませんが、加熱をすることでほどけて溶け出してきます。ここに「酸」と「糖」があると溶け出したペクチン同士が絡みついて網目を形成します。この網目が水分を抱え込む(ゲル化)ことで、ジャムのとろりとした食感が出るのです。

ゲル化の目安となる糖度は60%以上、酸度が0.2〜0.3%(ph2.7〜3.4)です。なので、砂糖はある程度の量を使い、酸味が少ないフルーツを使う場合はレモン汁(クエン酸)で酸度を調整する必要があります。

憶えておきたいのは『ペクチンは熱に弱い』ということ。ペクチンは100℃で20分以上加熱すると壊れてしまいます。そのため、ジャム作りのキホンは「短期決戦」です。コトコトのんびり煮込むとペクチンは壊れてしまいますし、砂糖も色づいてくるので果物のフレッシュな香りもなくなり、色も悪くなります。ゆっくり煮ていいことはなに一つないので、この点を頭に入れて、それでは実際に作っていきましょう。

いちごジャム 
いちご 正味270g〜280g
グラニュー糖 135g〜140g(いちごの重量の50%)

砂糖はグラニュー糖がオススメです。上白糖でもつくることができますが、転化糖が含まれている関係で、若干くどい味になりますし、色も悪くなりがちです。(転化糖はカラメル化反応を起こしやすいため)

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まずはいちごをよく洗います。いちごを洗うときはヘタをとってはいけません。ヘタをとってしまうとそこから水が入り、水っぽくなってしまうからです。また、ザルに入れて蛇口から水をザーザーかけるのも避けましょう。イチゴのホコリや汚れはそれでは落ちません。正解はボウルに水を張り、かき混ぜたら、手ですくいあげる方法。汚れはボウルの水の底にたまるので、手ですくい上げるのがポイントです。時々「いちごジャムに使うイチゴは洗わずに使う」というレシピ(伝統的な製法を大事にするパティシエに多い)がありますが、ボウルに溜まった水の汚れを見れば次からは洗わずにはいられなくなるはずです。

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分量のグラニュー糖をいちごにまぶします。ゴムベラを使うか、ニトリル手袋をした手で傷つけないように丁寧にまぶしましょう。砂糖の分量が多いので、底に多少は溜まると思いますが、それは気にしないで大丈夫です。このまま一晩(日中であれば半日放置します)ラップをして放置します

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イチゴから水分が出てきたらOKです。果物がもつ水分をいかすことで、加熱を短時間にすることができます。この工程を踏まずにイチゴと砂糖を混ぜたら水を加えて煮るレシピもありますが、その方式は余分な加熱時間がかかり、やはりジャムとしての味は落ちていしまいます。短期決戦だからこそ、戦に勝つためには事前の準備が重要なのです。

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鍋にイチゴを入れ、加熱をスタートします。火加減は強火です。鍋は酸に弱いアルミを避け、ホーローやステンレス製のものが望ましいです。

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このくらいの量なら心配ないのですが、量を2倍、3倍に増やすと、はじめの段階は吹きこぼれる可能性があるので沸いてきたら火加減を中火に落とします。それでも弱火にはしません。

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ゴムベラで側面を落としながら、煮詰めていきます。泡が浮いてきますがこれはほとんどが「イチゴに含まれる空気」です。

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試しにすくい取って、舐めてもアクは感じません。泡はとらなくても味には影響しませんが泡が浮いて見た目が悪くなる、というのが嫌であれば取り除いてください。今回は取り除かずにそのまま煮ていきます。加熱を続ければそのうち泡は消えるからです。

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泡が大きく煮詰まってきました。トータルの加熱時間は10分です。終了の目安は温度計があれば104℃になったことを確認するだけです。これは砂糖の濃度が高くなると沸点が上がる性質を利用したものです。(102℃で糖度50度、104℃で糖度65度が目安)

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煮上がりの目安はコップテストでも確かることができます。冷水を入れたコップに煮ているジャムを少量落とすと、、、

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水のなかで散らずに沈みました。この状態まで煮詰まったら火を止めます。このようにイチゴの粒を残したジャムをプリザーブスタイルと言います。好みでゴムベラを使ってイチゴの果肉を潰すとパンに塗りやすくなるのでこのあたりはお好みで。

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熱いうちに清潔な容器にジャムを移しましょう。煮ている途中で泡をとる作業を省略しましたが、この段階で、表面に浮いた泡を取り除けば見た目にもなんの問題もありません。

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出来上がり。ジャム作りの失敗パターンは主に二つ。一つは色が悪くなってしまった、というもの。ジャムの色が悪くなるのは加熱時間が長いことが原因です。加熱時間が長いと砂糖がカラメル化するので、黒っぽい色になります。2つ目は仕上がりがゆるい、という場合ですが、これはペクチンが壊れてしまったわけですから、やはり加熱時間が長いことが原因です。

今回は10分間煮ましたが、2倍の分量でつくりたい場合、加熱時間が20分くらいに伸びます。ペクチンは100℃で20分くらいで壊れはじめるので、これが限界。これ以上、分量を増やす場合は加熱時間を伸ばすのではなく、鍋を大きくして対応します。そうすれば加熱時間が短くて済むからです。

ちなみに大量につくるメーカーはどうしているのか、というとまず砂糖でイチゴを漬けるのではなく、イチゴを冷凍した状態でストックし、それを解凍して使うところが多いようです。冷凍すると水分が膨らみ、それが細胞壁を壊すので、同じようにやわらかい状態になるので、一晩なんて待ってられへんがな、という人にはいいテクニックかもしれません。次の煮る工程ですが、真空釜という圧力を下げる=沸点を下げる釜を使い、低温で煮ます。高い温度で煮るとイチゴの色や香りが悪くなるからです。香りを逃さないように蒸気を捕まえて元に戻す技術を持っているメーカーなどもあり、なかなか真似できないところもあります。

せっかく自分でつくるのであればフレーバーを足すのがおすすめです。例えば「黒胡椒」と「バジル」を加えるとスパイス感のある大人の仕上がりになります。。バジルは乾燥バジルを加熱終了1分前に少量加え、粗く潰して黒胡椒もやはり同様に仕上がり間際に投入するだけです。

おまけ 脱気の仕方

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ジャムは脱気をしたほうがもう少し日持ちします。熱いうちにジャムを瓶に詰めて、蓋をほんのすこしゆるめたら、、、

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沸かした湯に沈めます。火加減は弱火です。20分間加熱します。

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しっかりと殺菌し、なかに残った空気が熱くなったらとりだします。

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しっかりと蓋を締めて、、、

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逆さまにして冷まします。冷めると真空に近い状態になるので、より日持ちするになります。ただ、砂糖の量が50%なので保存は冷蔵庫で。常温で保存したい場合は砂糖の量を80%にする必要がありますが、さすがに現代的ではないので一応、理論を頭に入れておくだけでいいでしょう。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)

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樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)料理本『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA)など。