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〈食と生活〉真空調理の豚の角煮

雑談からはじめます。『ドラえもん』という漫画は僕のバイブルなのですが、そこでは未来の景色が時折、描かれています。70年代に『未来学』という学問が日本でも流行って、様々な未来予測がされました。道路がチューブになっていたり、車が空を飛んだりというものですね。でも、そういった事象はほとんど実現していません。今後、技術的には可能になるかもしれませんが、人間の生活ってあんまり変えられないものなんですね。

食の分野でいうと「カード食品」です。食べ物をカード型に加工し、栄養素を摂取できるようにした食べ物で、よく未来図に描かれています。レイ・ブラッドベリの小説『火星年代記』では主人公はマッチ箱に入った錠剤──一週間分の栄養素が摂取できる──を持っています。食べるのをやめるのではなく〈純粋なもの〉から効率よく栄養を摂取したい、というのは人類にとって古代からの夢で、古代ギリシャ人はアンブロシアという神々の食べ物──香りよく、蜜(みつ)よりも甘く、それを食べた者は不老不死になる──を求めました。その未来予測は今、完全栄養食「ソイレント」などの形で実現していますが、すべての万人がそうした完全栄養食に移行することは考えにくいでしょう。(一部の人は受け入れるとは思いますが)

当たらない未来ですが、一つだけ確実に予測できるものがあります。それは人口統計データです。日本の少子化も1970年代にはかなり正確に予測できていました。(しかし、なんの対策も打たず経済成長を優先させた結果として現在があるわけです)予測では2050年の世界の人口は現在よりも35%増加し、95億人に達するとみられており、食料をゆき渡らせるには現在の倍の供給量が必要となる、と試算されています。

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