家庭向け赤ワインソースの決定版レシピ
お店で出てくるような茶色いソースって憧れません? 昔、食育通信オンラインというwebメディアに載せていた家庭向けの赤ワインソースのレシピをブラッシュアップした決定版です。
再掲載してくれ、というリクエストがあったので載せますけれど、これ本当につくる人いるのかな、というレシピではあります。家庭向けという名前をつけてますが、めっちゃ時間と手間がかかるので、心に余裕がある時に挑戦してください。
赤ワイン 375cc
牛ひき肉 100g
エシャロット 1個(又は玉ねぎ1/4個)
グラニュー糖 こさじ1
ゼラチン 10g
バター 30g
塩 胡椒
いわゆるソースボルドレーズ(ボルドー風のソース)です。通常はエシャロットをバターで炒めたところにワインを注ぎ煮詰める→フォンドボーを加えてさらに煮詰める→濾してからバターでモンテ、という工程を踏みます。このレシピはフォンドボーの代わりにひき肉+ゼラチンを使うのがポイント。
赤ワインの種類はボルドーを選ぶのがセオリーですが、バランスがいいフルボディを選ぶと価格がネックになってきます。今回はローソンで1本1000円くらいで売られていたロゴダジ シラーズ&カベルネを選びました。このワイン、高コスパですね。
牛ひき肉を鍋に入れて、火にかけます。ひき肉には脂があるので、油を敷く必要はないと思います。
途中でエシャロットの薄切りを加えて、中弱火ぐらいの火加減で7〜8分間くらいグーッと炒めていきます。
これくらいまで炒めます。この茶色がソースの色になります。
赤ワインを投入して、鍋肌についた茶色い部分(スックといいます)を溶かし込みます。
ワインの酸味を抑えるために砂糖を少量加えました。リッチにしたい場合はポルト酒50ccを入れるといいのですが、ポルト酒1本買っても使い切れないかな、と思ったので砂糖にしてます。最終的なとろみとツヤをつけるために水アメを使う手もあるので、このあたりのテクニックはまた別途紹介します。
ここで秘密兵器のゼラチンを投入。板ゼラチンを水で戻してから絞って加えます。フォンドボーがあらゆる料理に使われるのが仔牛はゼラチンが豊富で、癖がないから。しかし、仔牛の骨を入手し、フォンドボーをつくると10時間かかります。ようはゼラチン分が欲しいわけですからゼラチンを買ってくれば簡単。
はじめだけアクをすくって弱火でことこと1時間煮出します。フォンドボーの旨味部分をひき肉から抽出します。ひき肉ははじめから小さく切ってあるので短時間で旨味が抽出でき、効率的です。
目安としてはこれくらい。半量以下になるいまで煮詰めます。
ザルで濾します。このひき肉はカスカスなので再利用はできません。力強く絞って旨味をあますところなく液体に出します。脂肪分があるので、冷蔵庫で3時間以上冷やします。
冷蔵庫で冷やすと脂肪分が表面に固まります。
スプーンで丁寧にこそげとって、脂肪分を除去します。
この状態で冷凍しておくこともできます。鍋にうつして火にかけましょう。味と濃度が足りなければさらに煮詰めます。
沸いているところにバターを溶かし込みます。いわゆるひとつのバターモンテです。バターの量を増やすととろみはさらに強くなります。ゼラチンが入っているのできちんと乳化するわけですね。バターモンテをする時は火から外して(そのほうがバターがゆっくり溶ける→マヨネーズをつくるときと同じで少量ずつ溶かし込むのが油脂を乳化させるコツです)行うほうが安全です。
塩、胡椒で味を整えればでき上がり。赤ワインの酸味と肉の旨味が混じった完璧なボルドレーズソースです。ここに水溶きコーンスターチを入れるとこんな艶と透明度は出ません。最近はこういうソース、見かけなくなりましたねー。
皿に敷くとこんな感じ。ステーキやハンバーグなど肉料理に使います。このソースの元ネタは分子料理に精通した物理学者エルヴェ・ティスの『純粋なピノ・ノワールソース』です。ティス教授はピノ・ノワールを煮詰めてゼラチンを加え、大量のバターを加えてモンテしたソースを発表しています。料理の要素を分解し、置き換えるのは分子料理の成果の一つ。
全然、関係ない話ですが、ソースの鍋に指を突っ込んで味見をするシーンを見たことありませんか? 今では衛生的な見地から行われなくなりましたが、これは肉にソースがきちんと絡むか(適切な濃度がついているか)を確かめるための作業です。お客さんに食べさせる場合にはもちろん行うべきではないですが、自分ひとりでソースを作って食べるなら一度、試してみると「なるほど」と勉強になると思います。こういう仕事の意味ってもはや調理師学校では教えなくなりましたが、一度は経験しておく意味ってあるように思うんですけどね。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!