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牡蠣の洗い方比較〜片栗粉と大根おろし〜

牡蠣の消費量が最も増えるのは十二月。(実はおいしいのは春先なのですが)スーパーの鮮魚コーナーでも牡蠣が安く売られています。

牡蠣の下処理の基本はまず洗うことですが、様々な流派(?)が入り乱れています。基本的に真水で洗うのは避けるとして、あとはケースバイケースで選択するのが吉。

一番簡単なのはザルを使って塩水で洗う『ふり洗い』です。

3%濃度の塩水ですすぐようにして洗います。塩水で洗うことで牡蠣の表面の成分が溶けるので効率よく汚れが落ちます。牡蠣は塩水を吸い込むのでできるだけ手早く行うのが適切でしょう。(昔の牡蠣工場では牡蠣を海水につけて水増しするといった不正が行われていたことがあったようです)
しかし、この洗い方では牡蠣の細部まで汚れを落とすことはできません。

もっと丁寧にするなら片栗粉を使って洗います。これは中国料理の技法。牡蠣をボウルに入れて、片栗粉を大さじ2ほど適当に振りかけ、混ぜます。

片栗粉が牡蠣の表面の汚れを吸着してくれます。写真を見てわかるようにかなりの汚れがとれています。

塩水で片栗粉を洗い落とします。小麦粉を使う人もいますが、小麦粉には粘りがあるので洗うのが面倒です。片栗粉のほうがいいでしょう。また、腸炎ビブリオの心配をして真水で洗う人もいますが、夏場ならともかくそれは心配しすぎかもしれません。

日本料理の世界では大根おろしを使って洗います。ボウルに大根おろしを汁ごと加え、馴染ませるようにして混ぜます。

汚れが落ちているのがわかります。大根にはタンパク質分解酵素であるプロテアーゼが含まれているので、実際には表面を溶かしながら洗っているのです。片栗粉が物理的に洗浄しているとするなら、こちらはケミカルに洗っているところが違います。

臭みが強いかも、と思ったら最後の洗う工程で使う塩水にレモンを半分絞り入れてください。臭みの元であるトリメチルアミンはアルカリ性なので酸性の物質であるレモンで多少は中和することができます。生食の場合にはいいでしょう。

比較してみましょう。左が片栗粉で右が大根おろし。若干、大根おろしのほうがきれいに仕上がるのがわかります。古い論文では大根おろしを使ったほうが表面の細菌が少ないというデータもあります。(最近の論文では片栗粉と差がないというデータもあるので微妙ですが)細菌は加熱すれば減らすことができるので、結論から述べると生食するなら大根おろしで洗い、加熱調理なら片栗粉で充分という感じでしょうか。料理に応じて使い分ける必要がありそうです。

牡蠣の白ワイン蒸し
 牡蠣 適量
 白ワイン 150cc
 水   150cc
 昆布  少々

牡蠣の白ワイン蒸しをつくっていきます。今回は白ワインを使っていますが、もちろん日本酒でもおいしくできます。しっかりと火を通すので牡蠣は生食用ではなく加熱用を使うのがおいしくつくるコツです。
鍋に水、白ワイン、昆布の切れ端を入れ、火にかけます。

沸いてきたら牡蠣を投入します。牡蠣は冷たいので温度が下がるはずです。

再沸騰したことを確認してからごく弱火に火を落とし、蓋をして5分加熱します。

ちなみに厚生労働省が推奨している安全な加熱基準は「中心部を85~90℃で90秒以上加熱」となっています。5分経ったら熱いうちに食べてもいいのですが、今日はそのまま冷まします。

出来上がり。液体に浸した状態で保存し、様々な料理に応用できます。

今日はお粥に入れて牡蠣粥にしてみました。ちなみに数年前に書いたレシピが三陸フィッシャーマンズプロジェクトのウェブページに掲載されています(2017年11月現在)
牡蠣を使った料理 監修 Travelingfoodlab』

運良く殻付き牡蠣が入手できたら『牡蠣のむき方』を参考にしてください。デザイナーさんとのコミュニケーション不足で、「縦のラインと横のラインが交差する右上に貝柱があります」というキャプションのついた2番目の写真に黄色い○で貝柱の位置が示されていますが、実際はもっと下です。縦のラインと横のラインが交差する右上にナイフを入れると(4の写真のように)貝柱が切れます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!