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夏を迎える前に野菜の天ぷらの復習

いよいよ梅雨、という感じの天気ですが、これをすぎるといよいよ夏。昔は夏場になると食卓に野菜の天ぷらが登場したものです。大量に料理するのが楽だったからだと思いますが、肉や魚を食べないお盆の時期は精進揚げという家庭も多かったのでは。というわけで今日は天ぷらの基本です。

天ぷらのコツは3つあります。これだけ注意すれば大丈夫。

野菜の天ぷら
れんこん 小一節
ナス   2本
さつまいも 適量
かぼちゃ  1/8個
ピーマン  1個

野菜の分量は適量で大丈夫です。

すべて切って、準備しておきます。切り方は写真を参考にしてください。小さめ、もしくは薄めに切ると、加熱時間を短くできます。

天ぷら液
卵     1/2個
冷水    200cc
薄力粉   100g

まず最初のコツは『卵の量を控えること』。多くの家庭料理のテキストでは卵1個に対して水100cc〜200ccという割合が一般的。しかし、天ぷらの専門店では卵1個に対して水500cc〜600ccくらいが一般的。じつは薄力粉+水だけでも天ぷらの衣は一応、つくれるのですが、ボリューム感のない仕上がりになり、カリッと感も持続しません。卵を加えることでボリュームが出て、タンパク質が固まるときに水を押し出すのでカラッと揚がります。かといって卵の割合が多すぎると衣が膨らみすぎるので(ホットケーキを想像してください)カラッと揚がらないのです。なぜ家庭料理のテキストでは卵の割合が多いのか。これは「卵1個を使い切りたい」という家庭の台所事情から導き出された妥協案だと思われます。

卵が高かった頃ならいざしらず、現代であれば卵が半分余っても卵かけご飯にして食べるなり、味噌汁に入れるなりすればいいわけで、無理に使い切ることに拘る必要はないのでは、というのが僕の考えです。で、こんな分量にしています。

まず卵に冷水を混ぜて、よく溶きます。最初に卵水をつくる理由はあとからかき混ぜる回数を減らし、水に卵を完全に溶かし込むため。お店ではここまで準備しておき、冷蔵庫にしまっておきます。で、使用する直前に小麦粉混ぜるわけです。

2つ目のコツは〈小麦粉を冷凍庫で冷やしておくこと〉です。天ぷらの衣をカリッとさせるためには小麦粉のグルテンの生成を抑えることが重要です。

グルテンについて簡単に説明しおきます。小麦粉に水分を混ぜると、小麦粉のなかの2種類のタンパク質「グルテニン」と「グリアジン」が水分によって結びつき「グルテン」を形成します。グルテンは弾力性や伸縮性のあるタンパク質で、いわゆる粘り気。うどんの腰や粘り、パンのモッチリ感もグルテンの性質によるもの。

グルテンは水分を抱え込む性質があるので、天ぷらの場合はカラッとあがらなくなります。冷やすことでグルテンの生成は抑えられるので、卵液をつくる際に氷水を使うのは基本。さらに一歩踏み込んで粉自体を冷やすのもコツです。ちなみに−18度の急速冷凍庫で冷やした小麦粉を使っている天ぷら屋さんもあるそうです。

ここで揚げ油を準備しておきましょう。

小麦粉を加えて混ぜます。混ぜる時は箸を使うのが一般的ですが、泡立て器を使うのが混ぜる回数を少なくでき、全体をむらなく混ぜられるのでおすすめです。泡立て器を切るように動かし、卵液と小麦粉をざっくりと混ぜます。

粉がまだ残っているこれくらいでやめます。あまり混ぜすぎるとグルテンが出てきてしまうので、カリカリ感が失われます。

野菜に小麦粉まぶしてから、しっかりと落とします。これが最後のコツです。この粉を打ち粉と言いますが、素材の表面の水分を除去し、天ぷら液を野菜につける接着剤の役割を果たします。しっかりと打ち粉をすることで素材の水分が外側の衣を湿らせることを防ぎ、カリカリ感も増すのですが、打ち粉が多すぎると、衣が剥がれる原因にもなります。そこでむらなくまぶしてから、しっかりと落とす、という工程が重要になってくるのです。

天ぷら液を野菜に落とします。野菜を揚げる時の温度の目安は160℃。というわけで170℃に熱した揚げ油に衣をまぶした野菜を落とします。

この時、箸を油に入れないように。野菜を上から放るように入れると箸をつけた部分にも衣が覆われるので、上手に揚がります。また、表面が固まるまでは触らないように。衣に穴が開くとそこから油が入って、油っぽい仕上がりになるので。

天かすはこまめにとるのが無難。

野菜は温度変化にそれほど敏感ではないので、どんどん入れても大丈夫ですが、それでも油の表面積の2/3を超えない程度の量にとどめるのが無難。揚げるということは水と油の交換なので、衣から出る水蒸気量が多すぎると、その部分の温度が下がり、全体の温度にムラが出て、やはり上手に揚がりません。このあたりはポテトチップスを作ったときと要領は一緒です。

衣が固まったら、時々裏返しながら揚げていきます。カリッとしてきたら出来上がり。油から引き上げる時は衣の一点を油の表面につけるようにすると表面の油が流れていくので、効率よく油を切ることができます。

カリッと揚がりました。天つゆでも別にいいんですけど、塩をつけて食べます。野菜の天ぷら、原価率的にはめちゃ低いので、家でつくって食べたほうがリーズナブルではあります。ビール片手に揚がったそばから台所でつまみ食いしていくのもいいですよね。

ところで日本の一部では天ぷらにウスターソースをかけて食べる文化があります。これがなかなかおいしい。ウスターソースの主成分は酢なので油ものと相性がいいのは当然ですが、特にかぼちゃとれんこんはおいしいと思うので、ちょっと試してみてください。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!