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料理の基本

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基本的な料理を丁寧に解説します
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#分子料理

ミキサーを使って5分で手作りバター

デンマークのレストラン『Noma』が日本でポップアップレストランを開いた時、彼らが唯一現地から持ち込んだ食材がバターでした。その理由は味ではなく「あまりにも値段が高い」からだそう。バターの価格がなぜ高いのか。一度、生クリームからつくってみるとわかります。 紙パックを振る方法が知られていますが、案外大変です。その理由は手の温度で生クリームが暖まってしまうから。(参考『生クリームの泡立て方』)今日は文明の利器を使いもっと楽にバターをつくる方法をご紹介します。必要な道具 はミキサ

生クリームの泡立て方

生クリームを泡立てる、とレシピに書くのは簡単ですが、なぜ泡立つか、不思議に思いませんか? 今日は生クリームの泡立て、いわゆるホイップクリームの科学を復習します。 卵白を泡立てたメレンゲはタンパク質が空気を抱え込む役割を果たしますが、生クリームの構造を支えるのは脂肪分。泡立てることで油滴の外側のタンパク質(カゼイン)の膜が破れ、脂肪が露出した状態になります。脂肪は水に反発する性質があるので、別の脂肪球同士とくっつきます。隣り合う脂肪球同士が結合することで空気を抱え込む構造をつ

道具コラム『電子レンジ』

数年前、電子レンジを使ったレシピを紹介した時、「身体に悪いのではないか」という意見を複数いただいた。庫内でなにが起きているのかわからないので、不安を抱く人が多いのだと思う。電子レンジの不幸は仕組みと名前が一致していないことだ。この名前は当時「電子」という言葉に高級な響きがある(たしかに電子機器なんて当時は高級品だ)という理由から命名されたらしい。 電子レンジは英語では「Microwave Oven」(マイクロ波オーブン)という。マグネトロンという真空管から24億5000万ヘ

ニンジンは焼いて食べると美味しい

『ブロッコリーは茹でるのがベター』という記事の続きです。今回はニンジン。ブロッコリーの風味化合物の多くは脂溶性のため、茹でて食べた方がおいしいという結論でしたが、ニンジンの場合は逆で『焼くのがベター』。 もちろん、カロチンは脂肪分に溶けるのですが(バターとニンジンジュースをあわせて加熱し、遠心分離機にかけてカロチンバターをつくると風味を強めることもできます)風味化合物の多くは水溶性。野菜ストックは玉ねぎやニンジンからつくりますが、それはニンジンの旨味が水に溶けやすいためです