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料理好きのための21世紀料理教室

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低温調理、エスプーマをはじめアルギン酸のカプセルなどの分子料理のテクニックを解説していきます
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2017年11月の記事一覧

アメリカ産牛肉のステーキ

ステーキの焼き方には人それぞれ。一般的に知られているステーキの焼き方は『フライパンを中火に熱し、ステーキ肉を入れる。焦げ目がついたら裏返し、火を弱火に落として好みの加減まで火を通す。肉を裏返すのは一度きりにする』というもの。最近では科学的な焼き方として『低温調理』が紹介される機会が増えました。低温調理はたしかに優れた調理法ですが、本当に〈科学的〉に正しいステーキの焼き方なのでしょうか? 今日はアメリカ産のステーキ肉を焼いていきます。この焼き方はハロルドマギーのメソッドをベー

2つの材料でチョコレートムース

近代の調理法を分類し、その調理の過程で起こる様々な変化をさらに分子レベルで捉えて、考察すること。これをフランス国立科学研究所のエルヴェ・ティスは分子料理と名付けました。分子というのは比喩的に使っている言葉で科学的な定義とは異なりますが、分子料理では材料の要素を分解し、それぞれの分子が料理においてどのような役割を果たしているのかを検討します。 ティス教授は近代のレシピを分析し、「あらゆる料理は式に置き換えられるのではないか、と考えました。それは食材の状態を〈G ガス 気体〉〈

液体のラビオリ(冷凍逆球体化法)

人工いくらの技術を応用した液体のカプセルを以前、紹介しました。〈調理テクニック紹介〈Spherification〉〉 今回、ご紹介するのは冷凍逆球体化法。同じようにアルギン酸液にカルシウムが入った液体を落とす逆球体化法を用いますが、事前に液体を冷凍させることで効率よくスフィアをつくる応用技術です。 液体(今回はオレンジジュース) 200cc 乳酸カルシウム 2g キサンタンガム 1g アルギン酸液 アルギン酸 3g 水

調理テクニック紹介〈Spherification〉

分子料理っぽいテクニックを紹介するシリーズ。英語でSpherificationと呼ばれるこのテクニックを日本語に訳すると『球状化』になるでしょうか。身近なところでは人工イクラなどの製造に使われている技術で、エルブジが料理に応用したことで世界に広まりました。定着した日本語の訳語がまだないので、ここでは〈スフィア〉と呼んでいきます。 簡単に説明するとアルギン酸ナトリウムとカルシウムを反応させて、液体をゲル状の膜で覆う、というもの。今日はごく基本的な原理が理解できる『ヨーグルトの

サーモンは低温でコンフィにすると滑らかな食感に

オーストラリア、シドニーに「Tetsuya's」というレストランがあります。シェフの和久田哲也氏が創作した料理は世界中から注目され、多くのレストランがこぞって真似しました。 この店の有名なスペシャリテは「タスマニアサーモンのコンフィ」。 「サーモンステーキの中心のレアな部分、あれをもっと食べたいと思った」 和久田さんは創作のきっかけをこんな風に語っています。たしかに上手につくったサーモンステーキ の中心部は柔らかくジューシー。生とは違ったとろけるような食感はどうやって出してい