ロラン・ティリ監督インタビュー「チームと選手が次のステップに到達するためには、別の人と一緒に仕事をする必要がある」
元記事:https://worldofvolley.com/latest_news/france/304748/interview-laurent-tillie-for-wov-i-had-feeling-that-team-and-players-needed-to-work-with-someone-different.html
見出し写真:FIVB
※翻訳はあくまで趣味の範囲であり、誤訳が含まれる可能性もあることを了承いただきお読みください。
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フランスのバレーボールファンにとって、男子代表チームのベンチにロラン・ティリの姿がないことに慣れるには時間がかかるでしょう。
特に、2020年の東京オリンピックでセンセーショナルな金メダルを獲得した後は。
ティリ監督が10年近くフランス代表を率いてきた間には、浮き沈みがありました。しかしその間のメダルの数、特に金メダルの数を見ると、下降と言うには違和感があります。
確かに、ティリ監督が指揮を執る前にも「Les Bleus(フランス代表)」はメダルを獲得していましたが(計7個)、いずれも光り輝くものではありませんでした。
2015年はターニングポイントとなった年でした。フランスがFIVBワールドリーグで優勝し、同国のバレーボールの歴史に名を刻んだときです。それはまた、ティリ監督が自分の名前を刻んだ瞬間でもあります。
―これまでに何度も聞かれてきたことでしょうが、私たちもその質問をしなければなりません。
オリンピックで金メダルを獲得したフランス代表チームに別れを告げる気持ちはどんなものでしょうか?
「それは最もエモーショナルであり、十分な満足感と喜びでした。
フランス代表監督としての9年間の仕事は、Netflixの番組『GOT』のようなおとぎ話のようなものでした。非常に良い結果を残した時もあれば、厳しい敗北や喪失を経験した時もあります。
ドラマやコメディのように、チームの中にはヒーローになる選手、ケガによる悲劇、厳しい選択、ヒーローの離脱、新しいスターの誕生など、たくさんの小さな物語がありました。
そして最後には、スポーツで実現できる最も美しい成果であるオリンピックの金メダルをチームが獲得しました。
ロシアとの決勝戦をテレビで観戦した観客はおよそ670万人(総人口の約10%)と言われています。バレーボールがフランスに大きな影響を与えたことを、とてもうれしく思います。」
―東京オリンピックでのフランスの金メダルへの道のりを、あなたの視点で表現してください。
「9年前、私たちすべての選手とスタッフは『私たちの最大の目標はオリンピックであり、リオや東京以前のすべての大会は、私たちが登るべきさまざまなステップである』と考え始めました。
そこで、私たちはコマンド部隊のようにもっと練習しようと決めました。そして、すべての大会、すべての試合を「勝つ」という同じ目標で戦うことにしたのです。
2016年のリオオリンピックまでの3年間で、各国際大会で3つのメダルを獲得し、出場権を獲得することを目標にしていました。
そして、若い選手たちの力とポテンシャルを信じて、自分たちができるプレーを選択しました。サーブとパス、ディフェンスとアタック...。
私たちには2つのサイクルがありました。2012年から2016年まではレベルアップし、初めてメダルを獲得しました。そして2017年から2021年の間には、メダル獲得が誰もが驚くようなことではなくなり、選手の年齢も上がってきたため、より多くのプレッシャーとストレスを感じながらもレベルを維持していました」
―自分のチームがメダルを獲得できるかどうかを疑った瞬間はありましたか?正直なところ、東京オリンピックではフランスがトップに立つと予想できましたか?
「常に疑問や自問自答があります。コーチングの仕事は情報学や数学の仕事ではありません。感情とモチベーションで仕事をし、体を痛めつけ、そして常にコートの反対側のチームも一生懸命プレーしています。ですから、試合や大会で負けたときには常に『IF』や『WHY』について考えます。
東京オリンピックでは、選手たちは常にメダル獲得が可能であると信じており、それが私たちの最終的な目標でした。そして、すべてが可能であるという気持ちが、次のレベル、つまりオリンピックのメダルに到達するための解決策を探すモチベーションを保つのです。私たちはメダルが欲しかったし、金を獲ることがベストでした」
―約10年間、あなたは途切れることなく仕事をしてきました。フランスチームのような有名なナショナルチームの監督を辞めるのは大変でしたか?
「2024年のパリのためにも、苦渋の決断でした。なぜならこれまで私たちはチームとして多くの良い結果を残してきたからです。そして、ベテランの選手と新しい若い選手がうまく調和して働くことができたからです」
―約10年間の中で、最も幸せだったと思える瞬間は?また、がっかりしたと感じた瞬間は(あれば)?
「すべての勝利が嬉しい瞬間ですが、最初の嬉しい瞬間は2014年の世界選手権(ポーランド)でした。そして、最初の挫折が訪れました。ブラジル戦、そしてドイツ戦での敗北です。
素晴らしい瞬間は、2015年のことでした。ワールドリーグ2部で優勝し、その1週間後にブラジルで行われたワールドリーグの決勝戦でフランス初の金メダルを獲得しました。さらにユーロでは1試合も落とさずに優勝しました!
そしてもちろん、私のスポーツ人生で最も幸せな瞬間であるオリンピックの金メダルです。
最も悪い瞬間はリオオリンピックでのグループ戦敗退と、2019年の欧州大会準決勝、フランス会場で行われたセルビア戦での敗北です」
―フランスの監督を辞めた具体的な理由をもう少し詳しく説明してください。
「きっかけとして、2つのことがあります。
まず、チームと選手が次のステップに到達するためには、別の人と一緒に仕事をする必要があると感じたことでした。
それは、2024年パリオリンピックまでより多くの試合と大会に勝利することであり、新しいシステム・新しい習慣・新しい話し方やバレーボールのコーチングを行うことで、選手のモチベーションを維持することです。
これまでの年月の中で、ワールドリーグ2015と2017での金メダル、ユーロ2015、さらにVNL2018での銀メダル、ワールドリーグ2016とVNL2021での2つの銅メダルを獲得しました。たくさんの感情、情熱を持っていて、とても誇りに思っていますし、とても感謝しています。この数年間、選手やスタッフは多くの犠牲を受け入れてきました。今はノスタルジックな感情に浸っています。
そして同時に、パナソニック・パンサーズから監督になってほしいという非常にエキサイティングな提案を受けたことでした。
日本はバレーボールにとって重要な国です。それは彼らが獲得したすべてのメダル、技術、プレーの仕方、哲学、文化から感じ取ることができます。
ですからこの挑戦は、バレーボールに関してだけでなく、新しい生活、新しい文化、新しい食べ物、新しい哲学、そして異なる考え方や生き方を発見するためにも、とてもエキサイティングなことだと思います」
―あなたの後を継いだのは、同じくトップエキスパートであり、バレーボール界のレジェンドであるベルナルド・レゼンデ監督でした。今回、フランス連盟がブラジル人を監督に起用したことについて、どのように感じていますか?
「フランス連盟がベルナルジーニョと契約できたことを誇りに思います。
チームにとっても、フランスのバレーボール界にとっても、とても良い選択だと思います。
選手たちは彼の下でプレーしたいと思っているし、ベルナルジーニョは選手たちの習慣を新しいものに変えてくれるだろうし、すでに変えてくれている。2024年のパリオリンピックまで、とても素晴らしい旅になるでしょう」
―レゼンデ監督と意見交換をしたり、アドバイスをしたりしましたか?
「彼にはアドバイスは必要ありません。しかし、私が準備や東京オリンピックで慌ただしくしていたため短い時間ではありましたが、とても友好的な交流ができました」
―指揮をするパナソニック・パンサーズに関して、今シーズンの計画やアイディアはありますか?
「日本のコンディションはとても良いですね。いや、良い、ではなく『素晴らしい』です。
選手たちはとても優秀で、勤勉で、すべての試合を見て練習することにとても情熱を持っています。彼らはすべての動きや技術を向上させるために、何時間もジムにいることができます。だから、とても面白いのです。
しかし、V.LEAGUEのレベルは(チーム間で)非常に近い状態にあるため、今シーズンの挑戦は難しいものとなります。 どのチームにも勝ち負けがありますし、毎週2試合という方式は想像以上に厳しいです。
昨年は、カップ戦・チャンピオンシップ・プレーオフと、どれも2位だったので、今年は決勝戦でも勝てるように頑張ります(笑)」
―近い将来、あるいは遠い将来に、再びバレーボールのナショナルチーム監督の仕事をすることになると思いますか?
「なぜそんなことを聞くんですか?その仕事をするには歳を取りすぎていると思いますか?私にはまだ情熱があり、自分の経験を伝えたいと思っています。
しかし今はパナソニックでベストを尽くし、(代表監督の仕事であまり会うことができなかった)懐かしい家族に会いたいと思っています」
●パナソニック パンサーズ公式のインタビュー
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