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都会のエアポケット

 久しぶりに高輪ゲートウェイ駅に行った。
 高輪ゲートウェイ。2020年3月に開業した、JR山手線の最も新しい駅である。
 2年前くらいにも一度訪れたことがあって、それ以来なんとなくずっと印象に残っていた。また行きたいなぁと思っていたのだが、通勤圏内でもないし、自宅からもまあまあ距離があるので、なかなか足が向かなかったのだ。

 先日、たまたま仕事でそちら方面に行く機会があり、思い立って帰りに寄ってみた。出先からの直帰。からの高輪ゲートウェイ。最高だ。

あまり人がいない高輪ゲートウェイ

 浜松町、田町と過ぎて、高輪ゲートウェイに到着。それにしても降りる人が少ない。平日の18時頃だったが、ホームに降り立ってもわりと閑散としている。ここが本当に山手線の駅? と疑いたくなるくらいの静けさだ。多分、この日が特別というわけではないと思う。普段からこんな感じなのだろう。

 電車を降りた瞬間、まず「木」を感じる。ぱっと目に入ってくるのが、ホームに敷き詰められた一面の木目のタイルだからだ。そして、吹き抜けになった天井がめちゃくちゃ高い! 複雑な骨組み(?)に思わず目を奪われる。照明も普通の駅とは違ってなんか雰囲気があるし、高輪ゲートウェイ駅そのものがひとつの芸術作品みたいだ。また同時に、近未来的な雰囲気も感じる。

特徴的な天井。折り紙をイメージしているとのこと

 それにしても人が少なくて静かだ。すぐ隣があの品川駅だとはとても思えないような落ち着き。近未来的な雰囲気も相まって、なんだかまるで宇宙ステーションの中にいるような感じがしてくる。いやもちろん駅なので、当たり前に電車の音なんかはするのだけれど、それでも不思議と、しんとしているのだ。

 山手線内の駅。都心のど真ん中。なのにあまり人がいない。閑散としたホームに流れる発着アナウンス。妙な落ち着き。品川駅と田町駅に挟まれて、この駅だけちょっと時空が違っているような・・・・・。
 エアポケット。そんな言葉がふと頭に浮かんだ。ちなみにエアポケットとは、「飛行機が急激に下降する空域」が本来の意味らしいが、比喩的に「空白」を表す言葉でもあるようだ。
 ここはまさに、都会のエアポケット・・・・・。

 高輪ゲートウェイ駅にはスタバがある。正確には駅構内ではなく、一回改札を出ないとたどり着けない。

頭上できらめくスタバのロゴ

 それにしても、旅先などでスタバを見かけると、ちょっとテンションが上がるのはなぜだろう。特別にスタバファンというわけでもないのだけれど・・・・・・。あの緑の女神マークには、人を惹きつける不思議な力があるのかもしれない。

 都心で駅近(というかほぼ駅の中)のスタバだと、だいたい混んでいることが多い。
 しかしここのスタバは、かなりいい感じに空いている(曜日や時間帯にもよると思うが)。さすがにガラガラとまではいかないが、全然余裕で座れる。私は使わなかったけれど、作業用の個室スペースみたいな設備もあったりして、集中できそうだ。

電車のホームが見下ろせないのがちょっと残念

 ドリップコーヒーとチョコレートスコーン、というお気に入りの組み合わせを頼んだ。周りはPCで作業をしたり本を読んだり、一人で静かに過ごしている方ばかりで、なんだか私も自然と背筋が伸びる。

 ところで私は、先ほど見かけたストリートピアノが気になっていた。
 高輪ゲートウェイ駅構内にはストリートピアノが設置されていて、空いていれば誰でも弾いていいらしい。私はピアノが好きなので、先ほど「ちょっと弾いてみようかな」と迷ったのだが、結局怖気づいて弾けなかったのだ。
 ちょうど、座っていた席からは件のピアノを見下ろすことができたので、コーヒーを飲みながらチラチラ様子をうかがう。時々人がやってきてはピアノを弾いて、誰もいなくなって、またしばらくすると次の人がやってきて、という感じだ。
 しかし、いかんせん人が通らないので、遠巻きにみんなが見ているということもなさそうだし、かなり気楽に弾いてよさそうだ。

 ということでスタバを出たあと、周りに誰もいないことを確認し、ストリートピアノを少しだけ弾いてみた。
 今練習中の、ショパンのノクターン(誰もが思い出す一番有名なやつ)。いつもは静かな音楽スタジオを借りて練習することが多いので、これだけパブリックな空間で、雑踏や電車の音が響く中でピアノを弾くというのは、新鮮で不思議な体験だった(幸い、最後まで周りには誰もいませんでした)。

 さて、この素晴らしい不思議空間「高輪ゲートウェイ駅」だが、どうも現在は「暫定開業」ということらしい。周辺の開発整備が今も進められていて、2024年度に晴れて「本開業」となる予定だそうだ。
 おお・・・・・そうなのか。きっと「本開業」となれば、現在とはまた人の流れなども大きく変わってくるのだろう。この「都会のエアポケット」状態も、そう長くは続かないのかもしれない。
「暫定開業」のうちに、心ゆくまで味わっておかなくては。

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