見出し画像

人生とは担任が語ったこと

高校生の時、担任が人生についてこう言っていた。
「人生は、登り坂だ。毎日毎日努力しないと進めない。」
話を聞いていた僕は、絶望した。絶望って若者の特権なのだろう。今ならわかるが、絶対的な不幸は存在しないし、担任はただ単に受験シーズンの僕達を奮い立たせようとしただけだったのかもしれない。でもその時の僕は、これからもずっとつらい日々が続くなんて、夢も希望もないな。しんどいと思った。生きていくのは、しんどいことしかないのかと。後日二者面談で「生きていたいか?」と聞かれた。生きるのがしんどくて、素直に生きていたくありませんと言えればよかったと、今は思う。その時は、完全に体裁や模範解答を答えるように生きていたいですと答えた。その答えを受けて、進路について話し合う時間となったが、あの時「生きていたくない」と答えたら、どんな話し合いになったんだろう。担任には、僕の絶望が透けて見えていたのだろうか。全員に同じ質問をしたと信じていたけど、そうじゃなかったのだろうか。自分自身に対する大事な質問を誤魔化したせいで、僕は大人になってからそれと向き合うことになった。あの時、素直に答えていたら生きやすかっただろうか。それとも、聞き流されて進路の話を続けられたのだろうか。人は、選ばなかった過去に期待することを辞められない。選ばなかった選択のほうが、幸せだったと疑わない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?