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詩:MOTHER2

はじまりの町から時空の果てまで
ぼくは一言もしゃべらない
どこかで見ているきみの心が
かわりに喋ってくれるから

雪の国から来たメガネは
恐竜に会ったらしい
友達を捨ててきたらしい

雲の上にいた弁髪王子は
星たちを連れて降ってきた
星にはひとつひとつ名前がある
ぼくたちには見えない名前が
それを指先でつつくのさ

かわいいあの子は
閉じこめられていた
でもいまはぼくの隣を歩いてる
ぬいぐるみが大好きな
ソフトクリームを舐めながら

7つのばしょと
8つのメロディ
心の中の
赤い海
勇敢な鳥たちと
裸のぼくが繋ぎ合わせた
母さんの子守唄

良かった
これで良かったの?

帰ろう
灰色になっても
体と心をなくしても
たたかうぼくたちの姿を
きみに見ていてほしい
名前も知らない
いつも見ていてくれた
ぼくを歩かせてくれた
神様よりも遠く
だけどすぐそばにいる
電話の向こうの父さんみたいに
顔も知らないきみの
心にこたえてほしい

この赤い悪意から
光に搔き消えて
ぼくたちは向こうへ行く
きみがいるかもしれない場所へ

ポケットの中の大切なもの
石ころのように
宝石のように
うす汚れて手になじむ
空気みたいに一緒だった
友達をひとり、ひとり、落としていく
「次に会うときは、恋人どうしだね」
友達にはもう戻れない
少しの寂しさを残して
でも、運動会の後みたいに満たされて
冒険の旅は終わった

家に帰ると、あたたかい
シチューのにおいの中に
母さんと犬がいて
母さんは、赤い服を着ていた
ぼくは少し笑った

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