ポストコロナ社会:世界に対して、しばし沈黙したって全然いい

1.社会の歪みが拡大されはじめた

前回のnoteでは、コロナが社会の歪みを拡大させる拡大鏡の役割をしている、ということを書いた。それがまさに今アメリカで起きていることと合致すると思って見ています。ちょうどこの記事を書いているカフェの隣の席からもテニス帰りの女性ふたりが「今アメリカ中でデモが広がってて、暴動とかにもなってるみたいだよねー。ニュース見るの怖いくらいだよねー。」とアフターヌーンティー片手に話しているのが聞こえてきています。そのぐらい今起きていることは世界に広がっているんだなぁと感じます。

南アフリカ出身でアメリカのThe Daily Showのホストを務めるTrevor Noahもこの社会運動の起点が社会に内在されていた事が"exposure(露出)"された結果という表現していました。これまでは、社会課題に対して危機感や使命感を持った人たちが行動を起こし、その団体の活動を支援する人たちがいることで、課題としてそこに存在していてなかなか根絶できないけれど、日々の暮らしがかき乱されない程度には問題に対処できていた状態だったと思います。しかし、ポストコロナ社会ではこれができなくなってきているのではないでしょうか。そうして、アメリカ社会に根深く残っている人種差別の意識がまさに露呈して、社会の歪みが拡大されているように見えます。

2.「あなたにも責任がある」は本当にそうなのか?

ところで、今アメリカでおきているBlack Lives Matterという人種差別に反対する社会運動について、「日本でも同じような差別構造がある。だからこのムーブメントは対岸の火ではなく、自分事として考えていかなければならない。行動していかなければならないし、私たちにはその責任がある。」という発信を目にする機会がここ数日で増えています。#blacklivesmatterというハッシュタグがついている投稿の多くにはこういうトーンがあって、読み手に対して「あなたにも責任がある」と主張します。

私は、こういう発信を見た時に賛同よりも違和感を覚えてしまいます。どうしてかなぁと考えてみると、どうも、そういうメッセージを発信すること事態がある大きな構造のなかに取り込まれていることのように見えるのです。差別の良い悪いを言いたいのではありません。差別をする構造もそれに反対するうねりをつくる構造も、実はある1つの考えを他方よりも大きく示そうとしていることにおいて同じなのではないでしょうか。本当に手放す必要があるのは、そのように二項対立的にものごとを切り取る視点、「A or B」と選ばせる視点ではないでしょうか。マジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)という言葉も、このA or Bというものの見方を生み出しているツールのように思えて仕方がないのです。

3.読み手に求められるリテラシーが半端ないから疲れる

「あなたにも責任がある」メッセージには違和感と伴に疲労感も感じます。これもどうしてなのかなぁと考えてみると、起きていることについて発信されているものについての質の保証がないので、読み手に求められるリテラシーが半端なくて疲れてしまうのです。

コロナにしてもBlack Lives Matterにしても、自分の主張と合致する内容を世の中に広めるために利用することは簡単です。また誰がそれを「経験しているのか」によって同じ事象でも切り取り方が違うので、文章になって発信されるときに当然書き手のバイアスが入ります。noteのように多様なバックグラウンドの個人が主観的に書いていて、かつファクトチェックされないものを読むときには、やっぱり相当の注意が必要です。メッセージに影響されすぎないようにバランスを取るのが大変なので、めちゃくちゃ疲れます。

4.世界に対して、しばし沈黙したって全然いい

Black Lives Matterにしろ、ジェンダーにしろ、気候変動にしろ、世の中に溢れる主張に感化されて、誰かの主張する「こうあるべきだ」をフォローする必要はないと思うのです。むしろ、どう考えたらいいのかを見定めるために、自分がそのこととどう関わるべきかを考えるために、世界に対してしばし沈黙したって全然いい。誰かの自分事に急かされて自分事を持つ必要はなんかなく、ただしばし静観しててもいいと思うのです。

コロナは拡大鏡で、社会の歪みが拡大されてきているのがやっぱりポストコロナ社会のようなので、ならばその歪みについてどう考えたらいいのか、どう関わるべきなのか、しばし沈黙して見つめてみることが大事なように思うのです。だから私はBlack Lives Matterに今段階で賛同も同調もしていません。まだ立ち止まって、どうこれを理解するのかを考えています。


どんな考えがしばしの沈黙から出てきたのかについては、また次のnoteにて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?