小説「対抗運動」第7章5 「デモしかバンド」の木の実ちゃん
舞ちゃん おいさん、これからハバナ空港へ向かうんやけど、ええニュースや。
おいさんらと一緒にイラク攻撃反対のデモに参加した、デモの時しか演奏せんバンドの、木の実さんいう人とハバナ大学の構内で会うてね、おいさんの疑問調べてくれるように頼んどいたよ。木の実さんは、キューバの教育制度を調べに来たんやたと。
びっくりしたんやけど、おいさんのこと知っとったよ。東京にはいろんな人がおるんやね。田舎ではデモもできんかったのに。キューバは医療費のみならず教育費も無料なんやけど、留学生にもこの制度が適用されとるらしいんや。
貧しくて、アメリカで医学の勉強を続けられん人らが、二百人もこの制度を利用しとるんやて。
キューバは面白い国やね。貧しいいうたらその通りやけど、どこでも音楽やりよるし、ダンスも上手や。クラシックバレーもレベル高いよ。リズム感だけやなしに、運動能力も抜群の人が多いわ。スタイルもええしね。
紛争地に多くの医者を派遣しとるし、発展途上国に教員や研究者も派遣しとる。
けど、こんな冗談も聞いたよ。キューバにはとにかく医者や教員が多い。
さらには、ミュージシャンやダンサーはもっと多い。しかし警察はそれより多いんやと。ははは。やっぱり監視されとるような気がしとるんやろうか?
おいさん、一番印象に残ったんはね、みな真面目や、いうことなんよ。確かに陽気なカリビアン、なんやけどね。歩いていると、セニュリータ、ハポネ?と皆声をかけてくれるし、うなずくとハポネ!いうて握手してくれるしね。
シクロの運転手さんはボコボコの道路を、知り合いとすれ違うたびに、アミーゴとか大声で呼びかけながら、なんとかタイヤ落さんように懸命に穴よけながら走ってくれるし、カタコトの英語話すと、誰か英語の解る人さがして来てくれるしね。通訳に呼ばれた人も、こっちが面食らうくらい真剣に対応してくれるんよ。
ほいじゃ、また。
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年9月29日
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