Homecoming⑤
セントルイスのターミナルで座り続けて、ふと連絡を取らなければいけない人を思い出していた。彼女の名前はアマンダといい、Eの親友でもあった。この旅が始まる数ヶ月前に、Eが彼女と話してあげてほしい、と紹介される形でアマンダと電話をする仲になっていた。勿論、彼女は私がフィラデルフィアに来ることを知っていて、会えることを楽しみにしていると前々から言っていた。勿論、彼女からも未読のメッセージが入っていたが、返す気もなかったので今まで放置していた。
電話をしてみると彼女はすぐ応えた。
「連絡くるのを待ってたよ!いつフィラデルフィアにつくの?」
彼女は何が起こったかをまだ知らないようだった。あるいは、そのように振る舞っただけだったのか。わたしは今までの出来事をすべて話し、すでに帰途についていることを伝えた。
「え‥ひどい‥そんな目にあなたをあわせるなんて‥」
「仕方がないさ‥カリフォルニアに帰れればすべてはどうでもいいよ‥」
「‥そう。でも、わたしはいつもあなたの味方だからね?それだけは忘れないで。あと、ちゃんとご飯は食べられてる?疲れているだろうけど、ちゃんと自分の事を大事にしてね。それに、わたしにもっと連絡とってもいいからね?」
わたしは心からその言葉がありがたく、次の週についたら連絡をとるという約束をして通話を終えた。渡しにとって彼女の仕草は不可解であった。普通に考えて親友の恋人にこんな言葉をかけるであろうか?
そんな事を考えているとセントルイスの街を照らしていたいずれ大きな太陽が西の空に沈んでいった。そして係員がロサンゼルス行きの出発案内を大声で始めた。わたしはその午前中に抱いた、西部の奥地へと失踪する妄想をターミナルに置いて、バスに乗車した。
グレイハウンドの運転手はみな個性が強い。優しくアナウンスをする運転手がいれば、客に怒鳴りつけるような運転手もいる。幸か不幸か、彼らとの関係は4時間で終わるものである。彼らは、4時間運転した後、下車してホテルに泊まるなり帰宅したりする。ほとんどの場合彼らに再会することはない。今回の件ドライバーもオクラホマシティーまでの付き合いだ。
雪はすでにやんでいた。これからの道中にも雪が降ることはないだろう。はたしてバスは大きなゲートウェイアーチを後にし、夕まぐれの中を、西に向けて走りだしていった。大きな夕日を先頭に見ながら、わたしはEのこと、そしてアマンダのことを考えていた。次の日が何をもたらすのかを気にしながら。
つづく