燕三条の成功例~高卒就職問題研究の視点から見る~

高卒就職問題研究のtransactorlabです。問題改善を目指して研究と提言を行っております。高卒就職問題の改善は日本経済の持続性にとって非常に重要な課題であると考えておりますが、この問題、地方創生とかなり密接な関係があります。今回はいつもとちょっと違う味付けのお話です。

先日、大学生の息子と一緒に新潟県三条市の燕三条地場産業振興センターに行きました。燕三条と言えば日本有数の金物の町。アウトドア好きな上に木工も趣味な私にとってはワクワクの種満載で、ずっと行ってみたかったところでした。

その燕三条地場産業振興センター。刃物好きにはホントにたまらない施設でした。

ニッポンの職人のスゴ技から生まれた製品が陳列されていて、私などは時間が経つのを忘れてしまいました。何よりもまず、そのモノたちが、"The Tools made in Japan"、高品質で実用的、それでいて庶民が買える価格であること。その展示方法が、昔ながらの金物屋さん的では全くなく(それはそれで好きなんですが)、ひとつひとつの道具の美しさを見る人にきちんと見せるショールーム的な感じの作りになっている。おそらくちゃんとしたデザイナーさんが手がけたのだろうと思います。

東京かっぱ橋が外国人観光客の人気スポットになっているらしいですが(私もよく行きますけども)、燕三条地場産業物産館が知られればさらに人を呼べるだろうな・・・なんてなことを思いつつ、欲しかったノコギリと爪切りを買って帰りました。

ずっと行きたいと思っていたのだけども行けていなくて、今回行く決心をしたのは実は高卒就職問題研究の絡みである発見があったからです。

私は高卒就職の実態を把握することを目的に全国の高卒求人の充足状況をウォッチしています。充足状況というのは、どれだけの求人票が出されたか、そして、そのうちどれだけの求人票が募集停止になったかを調べてるとわかる推測値のようなものです。あんまり具体的な数字は出せないのですが、最近の全国の全産業の平均では7.5%ぐらい。高卒求人票が1000枚あれば、そのうち募集人員が充足できて求人停止となるのは75枚程度。現在はそれほどの採用難だということになります。

製造業の充足率全国平均は、(もちろん推測値)だいたい10%と全産業平均よりは上ですがそれでも採用難。しかし新潟県は17.5%%とかなり高い充足率が出ていました。内訳を調べたところ、金属製品生産・加工の会社の充足率が他の地域に比べて非常に高く、しかも募集停止した(充足したと思われる)求人元が三条市に集中していることが分かりました。

三条と言えば金物!そして高級アウトドア・キャンプ用品で有名なあの会社!行かない理由などない!車で5時間かかるけど行ってみよう!となったわけです。

さて、金属加工系の仕事は、工場で作業服にヘルメット、高温・高電圧・油まみれ、巨大なプレス機や旋盤等々、いまどきの若い人が敬遠する要素が最も多い仕事のひとつであり、全国ものづくり企業は若い人材の獲得に四苦八苦しています。外国人技能実習生への依存度を上げざるを得ない状況もあるようです。しかし、この燕三条地域は少し違うようです。それが何故なのか。私なりに考えてみました。

燕三条地域に見える(ような気がする)若い人材供給の好循環の要素

職人リスペクト、誇り、カッコよさ
携わる人たちの生き生きとして良い生活をしている様子
子どもたちが見て憧れをもつ、親たちが無意識のうちに受け入れている
いいものを作り、正当な価格で売る、ブランド化、輸出、
若手人材供給がそこそこ回る 

https://pride-tsubamesanjo.com/

スノーピークの存在

ここに書いたことは私の勝手な推論で的外れなかもしれませんが、燕三条の金属加工・製造業の充足率が他地域と比較して非常に高かったことだけはまごうことなき事実です。

地域、そして関係者のみなさんの熱意と努力のたまものでしょう。

担い手不足からくる地域や組織の維持や活性化に困っている分野は日本中たくさんあります。というより、日本全体がそうですよね。この燕三条地域の成功例(まだあまり目立ってはいませんが)から学ぶべきことは多いと思うのですよ。

スノーピーク社については最近あんまりよくない話が聞こえてきていますが、私たちアウトドア好きの者には憧れのブランド。がんばっていただきたいものです。


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