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押されたときの痛みが体の左右で違う?

先日、仙腸関節障害の施術について書きました。その後順調に症状は改善しています。
施術をしている中で、ハムを緩めているとき押したときの痛みが左右で違うとその方が言ってました。
少し失礼かもしれませんが、その反応の違いが面白いなと思ったので、なぜ痛みが違うのかについて考えてみようと思います。

ちなみに、この記事を読む前に『痛み学習マガジン』をご一読していただくと理解が進みやすいかと思います。
(『痛み学習マガジン』は有料にしています)

1.患者さんの訴え

仙腸関節障害の疑いで施術をしていた患者さんが、ハムを押したとき左右で痛みが違うと訴えていました。
ちなみに左の仙腸関節部に圧痛と熱感が認められていた患者さんです。

右のハムを押すと押されたところが痛いと言っていました。一方左のハムを押したらどこが痛いかわからない、全体が痛いと言ってました。
この違いがとても面白いなと思いました。

2.痛みを伝える神経線維は2種類ある

痛みの感覚の違いは、痛みを伝える神経の違いだと考えています。
痛みを伝える神経にはAδ線維とC線維があります。
そしてAδ線維の先には高閾値機械受容器がありますので、これは一次痛を伝える神経です。一方C線維の先にはポリモーダル受容器があり、これは二次痛を伝える神経です。

高閾値機械受容器からの情報はAδ線維を通った後に外側脊髄視床路を通り、大脳皮質に投射されます。大脳皮質には、感覚野があり、正確な障害部位を特定することが可能になっています。

ポリモーダル受容器からの情報はC線維を通った後に内側脊髄視床路を通り大脳辺縁系に投射されます。これは痛みによる不快感のような情動反応を引き起こします。

感の良い方はお気づきでしょうが、「押されたところが痛い」と言ったときの痛みは、Aδ線維によって大脳皮質に投射された痛みだということが考えられます。
そして「どこが痛いかわからない、全体が痛い」と言ったときの痛みは、C線維によって大脳辺縁系に投射された痛みであろうと考えられます。大脳皮質の感覚野まで情報が行かないので、どこが痛いかを正確に特定できていないのです。

3.炎症反応はポリモーダル受容器の閾値を下げてしまう

重要な事実として、炎症によって発生した炎症物質はポリモーダル受容器が反応する閾値を下げてしまうということがわかっています。怪我をして炎症しているところが触るだけでも痛むのは、ポリモーダル受容器の閾値が下がり、弱い機械刺激にも反応しているということです。

今回の患者さんは、左の仙腸関節に炎症(熱感)がありました。もしかすると左の仙腸関節部の炎症によって発生した炎症物質が、左のハムを支配している坐骨神経領域のポリモーダル受容器の閾値を下げ、その結果「どこが痛いかわからない」と表現されるような痛みが出ていたのかもしれません。

右下肢は左下肢と違い炎症反応がありませんので、ハムを押した刺激は高閾値機械受容器によって受容され、それは大脳皮質に投射されるので「押されているところが痛い」というような反応が出ていたのかもしれません。

いかがでしょうか。
あくまで私の想像の話ですが、可能性としては十分あり得るかと思います。痛みについて学ぶとこうした反応の違いも説明できるので面白いですね。

是非、『痛み学習マガジン』も読んでみてください。
私たちが向き合う「痛み」とはいったい何なのか。案外多くの人が曖昧な理解のままになっているような印象があります。
(繰り返しになりますが、有料です。でも安いです!)


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