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信用状取引(L/C) ①L/Cの概要

ビジネスを行うプロセス上で最も重要なのが代金回収だ。商品が売れてもカネが入らなければそれまでの営業の意味がない。

貿易取引では安全性が高く、船積み後すぐに代金回収ができる仕組みとして信用状( Letter of Credit | L/C)を使った取引が行われることがある。言わずもがなもちろん、貿易取引を行うために理解しておかなければならない重要書類である。

L/Cを使うことによるメリット

輸出者が代金回収を懸念しなくてもよくなる
輸入者が支払不可能でも、開設銀行(後述)が支払ってくれる
銀行が仲介することで安全性が高くなる

初めて取引を行う海外企業に対しても安心して取引を行うことができる。そして副次的ではあるが、輸入者へL/C開設手続きを行ってもらうことが与信能力の確認にもなる。銀行への信用(財務力)がなければL/C解説ができないからだ。

L/C取引のプレイヤーたちと流れ

外部サイトのほうが詳しいのでそちらを参照してください。

とはいえ、勉強のために自分でもまとめておきます。

L/C取引には5種類のプレイヤーが登場する。

1. 申請者(applicant)
2. 受益者(Beneficiary)
3. 開設銀行(Opening Bank, Issuing Bank)
4. 通知銀行(Advising Bank)
5. 買取銀行(
Negotiation Bank)

そして以下の流れに従って取引が行われる。

①輸入者(L/C申請者)と輸出者(L/C受益者)でL/C取引合意
②L/C申請者が輸入地の開設銀行に信用状解説依頼
③開設銀行がL/Cを発行し、輸出地の通知銀行へ送付
④通知銀行が受益者へL/Cの通知を行う
⑤受益者が必要書類を提出し、買取銀行から代金を回収する

②③のステップで輸入地から輸出地へ信用状の橋渡しが行われることになる。通知銀行と買取銀行は一致することもある。

輸入者(Buyer, Importer)と輸出者(Seller, Shipper)について、L/C取引上では別の呼称が使われる。輸入者は申請者(Applicant)、輸出者は受益者(Beneficiary)と呼ばれる。銀行ルールだろうか。

L/Cの3つの原則

信用状取引規則の根幹をなす三つの原則を押さえておきたい。これらによって信用状取引は円滑に公正に行われる。

信用状独立の原則
信用状は一旦発行されると、売買契約や各種契約から完全に独立して取引される。ほかの契約から干渉されないということか。

書類取引の原則
信用状取引時には書類と貨物は別に輸送する。銀行は貨物の実物を確認する必要はなく、書類のみを確認する。

厳格一致の原則
従って信用状取引で扱う書類は銀行が審査する唯一のものであり、書類の内容には厳格な正確さが求められる。船積書類や為替手形(Bill of Exchange)とL/Cの内容に不一致(Discrepancy)があれば、代金の回収を行うことはできない。

信用状取引が難しい理由は、これら原則を中心とした十分な知識を理解しておく必要があるためである。

なお、主な船積み書類にはInvoice, 船荷証券(B/L), 保険証券(I/P)がある。これらをまとめて三大船積書類と呼ぶ。

信用状統一規則

信用状取引に関する国際的ルールは、国際商業会議所(International Chamber of Commerce | ICC)が「荷為替信用状取引規則および慣例(Uniform Customs and Practice for Documentary Credits: UCP)」によって制定している。

2020年現在では2007年にUCP600が一般に用いられている。しかし、1993年改定のUCP500が用いられることもある。

余談 2つのICC

UCPを制定しているのがICCと述べましたが、Incotermsを制定したのもICCでしたね。ICCの影響力すごいですね!

ちなみに、貨物保険の共通ルールはICCに則って定められていますが、これは協会貨物約款(ICC | Institute Cargo Clauses)なので別物です。

ややこしい。

参考文献

『話で覚えるL/C信用状の実務手続き』 姉崎慶三郎 著

マンガでわかる 貿易実務のきほん
木村雅晴 著、松浦はこ マンガ

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