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超短編小説『ナンセンス劇場』060

【伝説の剣】

勇者は魔王討伐へ行く前にある山へ向かった。
そこには選ばれた者しか使うことができないという伝説の剣があるのだ。

勇者が山へやって来ると1本の剣が地面に深く突き刺さっていた。
今まで何千、何万という者達が引き抜こうとし、失敗に終わった伝説の剣だ。

勇者は柄を握り渾身の力を込めて引っ張ると剣は大地を揺るがしながらその姿を現した。
5日程回り道をしてしまったが伝説の剣を手に入れ準備が整った勇者は魔王討伐へと向かった。

しばらく歩いていると、1人のきこりが木を切り倒しているのが見えた。
しかし斧が古く切れ味が落ち、なかなか作業が進まない様子だった。
そこで勇者が伝説の剣を一振りすると大木が豆腐のように切れ、瞬く間に10本の木を切り倒した。

さらに歩いていると、子供たちが野球をやっていたので仲間に入れてもらった。
勇者はバッターボックスに立ち、バットの代わりに伝説の剣でボールを打つと、ボールは遥か彼方へと飛んでいき見えなくなってしまった。

その他にもリンゴの皮を剥いたり髭を剃ったり遠くの物を引っ掛けて取ったりと伝説の剣は様々な力を発揮した。

数日後、勇者は魔王が暴れている国に到着した。
3日前に現れた魔王のせいで町は壊滅状態だった。

“一刻も早く魔王を倒さなければ”

勇者が魔王を探し街中を走り回っていると子供の悲鳴が聞こえてきた。
すぐに悲鳴がする場所へ向かうと、今まさに魔王が子供を殺そうとしているところだった。

「やめろー!!」

勇者は叫び、即座に意識を集中し手のひらに生体エネルギーを集めた。
そしてその集めた生体エネルギーを魔王に向かって放出すると魔王は一瞬にして蒸発しこの世から姿を消した。

泣いている子供に近寄り勇者は優しく声をかける。

「さぁ、この伝説の剣をあげるからもう泣くのはおやめ」

こうして勇者の活躍により世界は魔王の手から救われたのであった。



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