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【創作短編童話】わたしの、おにぎり

 おにぎりが ふたつ、きりかぶの うえに ありました。

 いつから そこに あったのか、だれが おいていったのか わかりません。

 みっちゃんが その おにぎりに ちかづき よくみてみると、こめつぶが ぴっかぴかに ひかっていました。

「おいしそうな おにぎり」

 おもわず、みっちゃんは こえを だして いいました。

 この おにぎりが きりかぶの うえに おかれてから、いったい どれくらいの じかんが たったのか わかりません。

(だれの おにぎり なんやろう?)
みっちゃんは おもいました。

(だれかの おにぎり なんやろうけど、たべてたべてと おにぎりが いってるような きが する)
そんなことも おもいました。

 みっちゃんが さらに おにぎりに ちかづこうとすると、

カア カア カアと こえが するやいなや おにぎりを ツンツンして おおきな くちを あけて パクリ。

 カラスは おにぎりを くちに はさんだまま とんでいって しまいました。

「びっくりしたぁ。あーあ、わたしの おにぎり、いっちゃった」

 みっちゃんが みつけた おにぎり。

 ほんとうは だれの、おにぎり?

 みっちゃんは、うちへ かえるまでのあいだ おにぎりの もちぬしの ことを かんがえました。

 (きゅうに かえる ようじが できて あわてて もってかえるのを わすれたんかなぁ。
 それとも、どうぶつたちのために わざと おいていったんかなぁ。
 どんなひとが おいていったんやろか。)
 みっちゃんは、あれこれ そうぞうしました。

 かんがえているうちに あっというまに じぶんの いえに たどりついた みっちゃんは、すぐさま おかあさんに  いいました。

「おかあさん、わたし、おにぎりが たべたい」

「きゅうに どうしたん。ほんなら きょうの ばんごはんは おにぎり つくろか」
 みっちゃんの おかあさんが いいました。

「うん」
 おおきな こえで みっちゃんは こたえました。

 きりかぶの おにぎりは、いまごろ カラスの おなかのなか。

 そんなことを そうぞうしながら、みっちゃんは つぎは わたしが おにぎりを たべるばんだ!

と、おにぎりを つくっている おかあさんの うしろすがたを ながめながら そうおもったのでした。

(おしまい)

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