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これまで、200くらいの企画展を作ってきて、その内容は藻類から動物、植物、化石、岩石と多岐に渡る。

そして、企画展の度にその対象をなるべく詳しく調べて来た。

対象を調べる時は、まず生きたところをじっくりと観察する。動き方や体の各部位の動かし方、その時の行動要素などを分けてさらに観察する(私の専門は行動学なので、特に行動を観察するのが好きなのもある)。

次に、実体顕微鏡で解剖などしながら体の隅々までを観察する。

さらに、生物顕微鏡や偏光顕微鏡などを使って、実体顕微鏡では見えない部分を観察する。

また、動物であれば、組織切片で詳しく体のつくりを観察する(細胞を見ないと外胚葉性とかがわからない)。

くわえて、当館にはないので近くの大学や近くの産業技術センターで走査型電子顕微鏡をお借りして、それでさらに詳しく観察する。また、機会があればμCTスキャンなども使わせてもらって、さらに詳しく観察するのである。時には、触角電図(EAGやERG)などを使って、触角などの感覚器についても調べていく。

そんな感じで、企画展の対象となる自然物を色々な視点で観察していき、企画展は作っていく。

これまで、200くらいの企画展を作ってきたから、自分でも気づかない内に、いろいろな分類群に手を出していたようである。

そして、いろいろな分類群のいろいろな体の部位と行動などを詳しく観察してきたから、最近では生物の体の微細な構造のつくりと機能について自分なりに理解できるようになってきたように思う。

だから、「この生物は、この付属肢でこんな行動をとるから走査型電子顕微鏡で見たら、おそらくこんな形状の微細な構造があるだろう」と想像ができるようになってきて、それは年々精度が上がってきた。

さまざまな生物の走査型電子顕微鏡写真による微細な構造

そして同時に、人が作った物などを見ると、「なんでこの道具にはあの生物のあの構造みたいなのを付けないのだろうか??あれをつけたらもっとシンプルに作れるのに、、」とか、「あの生物のあの毛をこの段のところにつけたら、水や空気を制御できて、もっと効率よく動かせるだろうに、、」とか、「あの生物のあの皮膚の構造をこれに施せば、もっとスムーズに折りたたんだり、広げたりできるだろうに、、」など、「あの生物のあの構造を」と思うようになってきた。

いろいろな分類群を相手に詳しく調べて来てよかった。そして同時に、自然から学ぶことは多いなと、道端の草や虫を見ながら、最近しみじみ考える。