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私は、仕事柄いろいろな分類群の生き物を相手にしている(生き物以外にも石とか草とか菌とかも相手にしますけど)。
 
企画展ごとに毎回素人に叩き落されながら、体の中や生態などをなるべく詳しく調べてきた。そうすると、どうしても納得がいかないというか、「許せない」生き物が3種類いる。

そこで、それらがどうして許せないのかを簡単に紹介してみようと思う。

まず、昆虫の系統樹をご覧頂こう↓

上から、いわゆる原始的と言われる昆虫たちが派生してきたことがわかるわけだが、昆虫類のもっとも原始的と思われるのが、イシノミである。ただ、それよりもトビムシなどはもっと原始的となるわけである。そして、イシノミの次に出てくるのが、私が許せない最初の生き物である『シミ』である。

なぜ、この昆虫が許せないのかというと、それまでのイシノミなどの昆虫や昆虫に似た生き物たちはどうしても湿った環境から出ることができなかったのである。そのため、イシノミもトビムシも腹胞という水を吸う器官を持つほど体の水分を保持するのが大変だ。

陸上生物が陸上で生きるための難関は尿の保持である。
尿をアンモニアのままで体の保管するためには、アンモニアは毒であるから危険である。そのため、多くの水分でそれを薄めればいいけど、そうすると乾燥したところで活動できない。そこで、昆虫たちはマルピーギ管というアンモニアを尿素などに変換する器官を手に入れて少しの水分で尿を安全に保管できるようにして乾燥した環境へ適応していったわけである。

多くの水分を保持しないといけない一つの理由

なのに、シミが軽々と乾燥したところで生きていける体を手にしたのである。さらに、それまでのイシノミなどは空気を送る気管が体の左右で繋がっていないが、シミが簡単に繋げてしまったし、顎も2か所で保持することで硬いものも噛めるようになった。他にいろいろとシミが獲得した体のつくりは、後の昆虫たちに受け継がれて昆虫の繁栄につながった。

「おいおい、シミよ。。。なんでそんなに簡単に乾燥に強く、それまでの森の藻類などを食べていた生き物が、乾燥した家の中に入ってきて、ティッシュとか色々なものを食べるんだ?教えてくれよ、、」とこの生き物を見る度に思うのである。

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次に、私が許せない生き物がいる。それが、『ヤツメウナギ』である。
この生き物以前の新口動物群は、ナメクジウオやホヤのような生き物であったが、この生き物が出現以降、硬骨魚類とかいろいろな生き物が出現して、我々ヒトにもなったわけである(これが進化してヒトになったわけではなくて共通祖先からということですが)。

ヤツメウナギの何が許せないのかを説明する前に、この生き物と成体と幼体の体を簡単に説明しておく必要がある。

スナヤツメの幼体
スナヤツメの幼体の体の中
スナヤツメの成体
スナヤツメの成体の体の中

まず、成体には目があるが、幼体には目がない。成体には甲状腺があるが、幼体には内柱溝しかない。他にも成体と幼体では生息環境が違うとかあるけど、私が許せないのは、この目と甲状腺である。

それまでの原始的な新口動物群であるナメクジウオやホヤなどは目もなければ甲状腺もなく、ヤツメウナギの幼体と同じような体をしているのだが(ホヤは幼生の時は目は一応ある)、ヤツメウナギは成長して、成体になると哺乳類などにまで受け継がれる目を手にいれ、ホルモンを制御する甲状腺まで出てくるのである。まだ目玉が動かせない目とかならまだ許せるが、この目は眼玉を動かす筋肉まで備えている。

これが、進化の過程で、その途中の過程を色々な種類を経て少しずつ変化して手にいれるのなら、まだ私も許せる。しかし、この大きな変化を同じ個体が幼体から成体に成長するだけで手にいれるのである。まったく許せない。

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そして、最後に、私がもっとも許すことができない生き物こそが、『カエル』である。

この生き物は当然のことであるが、幼体はオタマジャクシで、成体はカエルである。もしも、この生き物の成体であるカエルがオタマジャクシから足が生えて、水の中で暮らしていたのなら、まだ許せる(そのような種類もいるけど)。しかし、成体になると足が生えて陸上で暮らす。その足がまだ遠慮気味に小さくて、ぎこちなく動いているのなら許せるのだが、体に対してとても大きくてジャンプまでする。
さらに、水の中と陸では感覚器官もまったく違ったものにしないといけないし、餌の食べ方も変えないといけないのに、それをオタマジャクシからカエルにぬるっと変化して、やり遂げてしまう。そして、ここまでも納得がいかないことばかりだが、この生き物は生物が5感の中で最後に手に入れたおまけのような感覚器である『聴覚器』まで手に入れて、鳴きやがる、、、
私にはこの変化は、宇宙人とかが遊びで改良したとしか考えられないのである。

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そして、毎日、歩いていると前を横切るし、自転車に乗ろうとすると乗ってくる、朝 扉をあけようとすると扉に張り付いている。。。

カエル

「おいおい、こんなスゴイ生き物なら、恐竜とかのように古代の幻のような生き物であってくれよ。。なんでこんなに、ふつうにいるんだよ。。。」と、思うのである。

ほんと、許せない。