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第19話 自然史体験の日というイベント

 「自然史体験の日」というイベントは一日でさまざまな自然史に関する実験や採集、標本作成などの体験を通じて、身近な自然史に興味を持ってもらうということを目的に第1回を平成31 年2 月24 日(日)、第2回を翌年の令和2 年2 月16 日(日)に開催しました。そして、2年間開催できず、3年ぶりに第3回を来週の日曜日(令和4年2月19日(日))に開催しようと進めています。

第3回のチラシの表面
第3回のチラシの裏面

 では、そもそもこのイベントをなぜ開催することになったのか?そしてどのような想いがあるのか?を第3回を開催する前に少し紹介してみようと思います。
 
 当館では年間50回くらい観察会などの体験学習を開催しておりますし、小中学校に出向いての出前講座、近隣小学校でのクラブ活動などいろいろな面で身近な自然史について体験してもらう取り組みをしています。また一昨年からはその範囲を全国に広げ、オンライン出前講座も行っています。博物館の展示から得られる情報というのは少ないもので、やはり自分で体験して得た情報の方が圧倒的に役に立つと思いますし、人から何かを教えてもらうより、とりあえず体験した方が学ぶことが多いと個人的に思います。
 
 そのため、なるべく多くの体験の場を設けるようにしています。
 
 ただ、どうしても自発的に体験しようとした場合、既に自分の興味のあることにしか参加しようとはしないものですから(例えば、昆虫好きな人は昆虫に関するイベントにしか行かないから、岩石の面白さを知る機会を得ることができません)、知らない分野を知る機会がありません。「それを解消するにはどうしたらいいのか?」ということを考えた場合、「一日で一同にさまざまな自然史に関する体験ができる場があったらいいな」という想いがありました。

 また、来館される団体の方々(社会科見学など)に対して、簡単に体験できる教材や教育プログラムを用意しておきたいと考えていましたが、なかなかいい教材などを用意することができないでいました。そこで、「教材のデザインを同じにして、自然史に興味のない人でも簡単に体験ができる教材や教育プログラムを作って、試す場があったらいいな」という想いがありました。
 
 さらに、当館は施設名に「ホタル」という単語が入っているために、「ホタル」だけの施設だろうと思われて、ホタルの時期や夏休み以外は来館者が少ない問題がありました。そこで、「当館がホタルだけではなく、下関市の自然史全般を扱っている博物館であるということを知ってもらえる機会があったらいいな」という想いがありました。

 
 これら、いくつかの「想い」を解消するために5年前に考えて開催したのが、一日でさまざまな自然史に関する実験や採集、標本作成などの体験を通じて、身近な自然史に興味を持ってもらうイベント「自然史体験の日」でした。

 ただ、このイベントを開催するにあたり、いくつかの問題がありました。

 1つ目は当館には職員が一人しかいないということでした(第2話の補足参照)。一人でさまざまな自然史について教えることは時間を分けたり、人数が少なければできますが、それを一同に多くの人を対象に行うには無理がありました。  
 そこで、知り合いに、協力して頂けないか相談してみることにしました。すると、運がいいことに、知り合いが皆 いい人たちで、ボランティアで協力して頂けることになりました。

協力して頂いた講師の方々*各ブース2名ずつ

 2つ目は教育のイベントなので参加費は無料にしたいと考えていました。しかし、さまざまな教材や教育プログラムとなると準備にそれなりの費用がかかります。そうなると、参加費などをとらないといけません。そこで、教材などをすべて自前で作ることにしました。教材や教育プログラムなど自前で作ることができるのだろうか~と思っていましたが、色々と試行錯誤したり、協力してもらったりして作ってみたら、案外いい教材や教育プログラムができまして無料で開催することができました。

このイベントで生み出した自然史バイキングという教材の一部
このイベントで生み出した立体ぬり絵という教材
このイベントでは色々な道具も作りました。これは磁鉄鉱を効率よくとる道具です。

 3つ目はさまざまなブースを設置して体験してもらう場合、体験したい人の順番を制御しないといけませんでした。最初は、参加したい人が名簿に名前を書いてもらう方法などを考えましたが、いくら考えても複数のブースの名簿に名前を書いてしまうだろうから、そうすると混乱してしまいます。次に、各ブース毎で整理券のようなものを配る方法を考えましたが、おそらく複数のブースの整理券を取るだろうから、「例えば、Aのブースが整理券番号を呼んでも、その人がBのブースで体験していて、Bのブースの体験が終わるまでAのブースが1席空いてしまう」といった混乱が生じます。そこで、いろいろと考えて作ったのが、受付で体験する人だけに「申し込みカード」というカードを渡して、それを体験したいブースに置いてあるストッカー(勝手に命名した装置)という木の板に棒が突き立ててあるだけの道具に入れることで、一人で複数のブースに申し込みすることができない上に、一番下のカードを引きちぎって番号を呼ぶので、順番が前後することないという方法でした。体験したい人は半券を持っているので、その半券をブースの講師に見せて番号を確認することで申し込みした人を間違うこともありません。そして、講師はそのカードに新しい孔を開けて返すことで、その人はまた別のブースに予約することができるという仕組みです。

体験する人に配る申し込みカード(上の孔をストッカーに入れる、下の券は自分で持っておく)
申し込みカードを入れるストッカー
体験する人の申し込み方法

 そして、これら以外にもいくつかの問題をどうにか解決することができまして、平成31 年2 月24 日(日)に第1回を開催することができました。第1回では407名、翌年の第2回では392名の方に参加して頂き(体験した方の人数で、入場者数ではありません)、さまざまなブースで嬉しそうに体験している子供たちの姿を見ることできました。

 あれから2年の間、開催することができませんでしたが、今回、完全予約制(午前30組、午後30組)で、第1回・2回に比べて体験してもらえる人数は少ないでしょうけど、どうにか第3回が無事に開催でき、身近な自然史を体験して貰えたらと思って準備しています。

 この「自然史体験の日』というイベントのお陰で、当館がホタルだけでなく自然史を扱っている博物館ということを多くの方に知ってもらえたし(たぶん。。)、さまざまな教材や教育プログラム、冊子(身近な自然を見るコツ、ふれるコツとなぞとき博物記)を作ることができました。

自然史体験の日のイベントのために作成し、当日のみしか販売しない冊子『なぞとき博物記』の表紙
なぞとき博物記のプロローグ
なぞとき博物記の一部

 また、当館に個別で関わっていたさまざまな分野の方々に講師として協力頂くことで、異分野交流の場としての役割も多少あったし、何より一番の目的だった「知らない分野を知ってもらえる場」を作れたようにも思えました。

 さて、第3回が無事に開催できたらいいな~。