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お客様のご意見からわかる、販売時点での説明の大切さ。

前回、商品情報をお客様に伝えることの難しさなどをお話ししました。

それでは、今までに弊社に寄せられた典型的なご意見の事例を紹介しつつ、販売時点での説明がいかに大切なのか、お伝えしていきたいと思います。


弊社で、長く使用している底材が「発泡ポリウレタン」という素材です。この素材がメリットがある反面「加水分解」というデメリットもあることは、何回かこの投稿にも書かせていただいているので、覚えておられる方もおられると思いますし、すでに知っていたよという方もおられることと思います。

弊社も、前回の記事の様に、箱の裏の注意書きなど、お客様への情報提供の基本的なことはしていましたが、まだ、消費者志向が根付いていませんでしたので、社内で、そうしたクレーム事例を集約することなく、それぞれ営業担当の中で、対応をしていました。いわゆる消費者対応の一元化ができていなかったのです。

下駄箱のミステリーといわれた「ポリウレタンの底材の靴の加水分解」

たまたま、私が担当となる少し前、1997年に国民生活センターから公表された「下駄箱のミステリー」という見出しで「ポリウレタンの底材の靴の加水分解」の情報が、大きく新聞紙上でも報じられたことを覚えています。いちおう消費生活アドバイザーでしたので、国民生活センターからの情報には敏感でした。

これで、少しは消費者、お客様にも、理解が深まるだろうと思っていました。
ただ、マスコミに取り上げられても、それは一過性のことですので、記憶にとどめておられることも少ないようでした。
ですので
私が、お客様対応の担当をしはじめたころ、「何度も履いていないのに、歩行中に、急に靴底が壊れた。」、あるいは「下駄箱にしまっていて、履こうとしたら、靴底がボロボロになっていた。」といったお問い合わせ、クレームが、私の手元に多く上がってまいりました。

そういったとき、こちらからご説明させていただいても、お客様からは、「加水分解なんてなんですか?」「そんなボロボロになるなんて聞いていない、知らなかった」、「今まで何足も履いているのに、こんなことになったことがない」といったご意見をいただきます。
中には、お嬢様の結婚式に履こうと思って出したら、ぼろぼろになっていて、縁起が悪いとか、久しぶりの同窓会で、会場で靴を脱いだら、ボロボロとなり、友人に指摘されて、恥をかいた、など、そこに特別の心情がはいるケースもありました。

販売時点での説明が一番大事

ひとえに販売時点での説明がきちんとされてなかった、ことが大きな原因です。何かしらこちらこら一歩踏み込んだ説明をして、「減りにくい底材ですので、しまい込まずにどんどん履いてください。」とか、「雨の後などは履かれた後しっかり陰干しをしてください」と言った取り扱いについての説明をしていれば、お客様もご納得してくださったことと思います。

もともと、ポリウレタンは、天然ゴムの代替品として開発されたもので、衣料にも2~3%でも入っていれば、身体にフィットして、動作性もよくなり、着心地もよくなります。強度もあって、水着やスポーツウェアにも使われています。しかし、ポリウレタンというのは経年劣化する化学性質上の欠点があるのです。
性質上、ポリウレタンを使用すれば、致し方のないことと、業界では当たり前とされています。私もフィット性のあるポリウレタンが入ったスカートが3年ほどで、生地の表面の繊維が切れはじめました。

それでも、この発泡ポリウレタンの素材を長く靴の業界は素材に使用していたわけで、それは耐油性もあって、クッション性もあり、軽くて、耐摩耗性、つまり減りにくいというたくさんの長所があったからです。

その点を十分に先に、前もって説明をしていれば、お客様もしまい込まずにどんどん履いてくださっていたことでしょう。

いかに販売時点での説明が大切かがお分かりいただける事例かと思います。このことを踏まえて、ポリウレタンの加水分解だけでなく、他の靴についても、何もかもオールマイティな靴はありませんから、販売時点で、その靴の特徴を、しっかりと説明することが大切だと肝に銘じていかねばならないと思いを新たにしています。


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