フィジビリティチェックについて

 今日はフィジビリティチェックついて書こうかと思う。フィジビリティチェックとは実現可能性の有無の確認作業のことである。

 『こんな企画考えたんだけど、実現できると思う?フィジビリティチェックしてほしい』みたいな感じだ。

 フィジビリティチェックにどれだけ『YES』と言えるか、言った上で実際に実施できるか、あるいは制作できるかがテクニカルディレクタの腕の見せ所だ。フィジビリティチェックにNOばっかり言ってたらそのテクニカルディレクタは能力が低いし、『できます』と言って結局できなければ矢張りそのテクニカルディレクタは能力が低いと解釈されるだろう。

 ただしこのフィジビリティチェックの『できます』には色んな意味を込めて言ってたりする。そのあたりを今日は解説していく。

やったことあるから『できる』

 まぁ、これが一番一般的なイメージだろう。が、厳密に全く同じことをやったことあるパターンはそんなに多くない。規模や試行回数や精度、その他の条件が色々と違う場合が殆どだ。

 え?『じゃあ厳密にはやったことないのに「できますよ」っていうのは詐欺じゃないか』って?

 馬鹿を言っちゃいけない。世の中に完全に同じ状況なんて早々ない。新しい発見を確かめる時の再現実験ぐらいだ。もしも『やってから『できる』って言って欲しい』のならフィジビリティチェック作業が必要だ

近いものはやったことあるので『できる』

 実際はこれが一番多い一部条件は違うが、まぁ制作物が成立する条件を左右するような影響を及ぼさないだろう、というやつだ

  例えばLチカを10回点滅させたことがあるが、展示期間中は合計1000回点滅させたい、とか。

 いけると思っても実際は色々罠があったりもする。上の例だと『連続で点滅させてると段々部品が熱を持ってきて調子が悪くなった』とか『点滅させ過ぎるとLEDが壊れる可能性がある』とか。

 まぁそういうトラブルはある可能性はあるが、ちょっと作業をすれば、あるいは部品を追加すれば(金をかければ)解消できるだろう、とそこまで見込んでこの発言をする。なので見積もりはそのまま『できる』『できない』に関わってくる。バッファがないとこの手の話は受けづらい。

できる人を知っているから『できる』

 時々ある。具体的な何かを作る必要がある場合にこの『できる』は使われる。

 よく僕が例に挙げるのは『IPS細胞作れる?』とかだ。『できる』と僕は答えるが、僕が作れるわけがない。環境もない。が、京都大学の山中先生が作れるということを知っている。作っていることも知っている。山中先生は作れる環境も持っている。なので山中先生を含んだチームが組めれば『IPS細胞を作れる』。なので僕の答えとしては『できる』だ。

 この業界で言うとすげー実装の仕方が想像も付かない美しいグラフィックをリアルタイムで作ってる人が居て、『あんなのが作りたい』と言われたら『できますよ。その人にコンタクト取ってみましょう』と言う。そんな感じだ。

金をかければ『できる』

『ドローンを1万台飛ばしたい!』。いやそりゃできます。お金があれば。ここで『いやー無理ですよ』、と言わないのが実は大事だ。

 非現実的かもしれないが、しっかりとそのハードルをチームで共有することが大事になったりする。『できる』ためには敷地面積、バッテリの充電環境、飛行許可、セッティング時間、そしてもちろんドローン購入費用。そういった実現へのハードルを共有することが大事である。実はチームメンバにインテルの創業者の孫が居てドローン費用の問題は何とかなるかもしれない(まぁ、あくまで可能性が0ではない、ということだ)。

時間をかければ『できる』

 ほぼ上と一緒。他の要素と違ってお金と時間は結構みんな連動して考えやすい。何故だろう。

それっぽく動かすことが『できる』

 打診された方法で実装しても要求したものは実現できないが代替手段がある場合に使う。

 例えば『ライブで演者が指差しした方向のディスプレイが反応して色が変わるようにしたい』と言われる。

 が、そんな反応をするディスプレイを作るのは、無理じゃないだろうがかなりお金がかかる。センサの構成も大変だ。そこでオペレータを一人つけて、『ライブで演者が指し示した方向のディスプレイを反応させる操作をする』よう依頼をする。センサはどんだけ頑張っても100%にならないので間に人を入れてしまえば一気にファジーな処理をやってくれて精度が向上する。

 が、これで『いいっすね!もうできあがりましたね!これ商品化しましょう!横展開しましょう!』とか言われても困るわけですが。

『できる』のグレードを調整すれば『できる』

 『できる』には種類もあるがグレードも、実はある。『常に100%できる』、『時々失敗するかもしれんがまぁ、できる』、『限定された環境ではできる』みたいなやつだ。

 ライブ演出で演者が絡んだ演出なら100発100中を目指したいところだが、ユーザ参加型イベントの演出の一部なら実はやり直しのほうがコストが低かったり、クォリティが上げられたりする。

 例えば取った写真の顔を切り抜いて映像にはめ込むコンテンツの場合、ユーザの明らかに失敗した写真のクォリティを復元させる技術よりも、ダメな写真を検出して再撮影を促す実装のほうがたやすくクォリティが上がる。あるいは失敗をしない、丁寧なナビゲーションを入れる。

最後に

 今書いた『できる』だが、勿論企画の内容によっては使えないものも多い。というか、『できる』とは言っているが企画の内容の変更を促すものも結構ある。『できる/できない』の2択じゃなくて『できる/できない』の間の沢山の『できる』から今回の落としどころとして最適な『できる』を探すのが大事だ。

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