インスタレーションの作り方

テクニカルディレクターの森岡です。今回は我々の業界で言うところのインスタレーションの定義とよくあるパターンについて書いていきます。

インスタレーションって何?

Wikipediaによるとインスタレーションは以下のように書かれています。

インスタレーション (英語: Installation art) とは、1970年代以降一般化した、絵画・彫刻・映像・写真などと並ぶ現代美術における表現手法・ジャンルの一つ。ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術。
空間全体が作品であるため、鑑賞者は一点一点の作品を「鑑賞」するというより、作品に全身を囲まれて空間全体を「体験」することになる。鑑賞者がその空間を体験(見たり、聞いたり、感じたり、考えたり)する方法をどのように変化させるかを要点とする芸術手法である。

ということで正確にはインスタレーションは芸術の手法のうちのひとつです。ぱっと名前が出てくる人だと草間彌生や塩田千春などでしょうか。

しかし芸術か否かのラインは非常に曖昧なので、個人のアーティストが美術館で開催するようなもの以外、例えばクライアントが居て、クライアントの商品の世界観やクライアントの持つブランドの世界観を体験してもらうために設計された空間も同様にインスタレーションと呼んでいます。

例えばAudemars Piguetが池田享司に依頼して2019年に東京ミッドタウンにて『時計以上のなにか』と銘打ったイベントを開催しました。特設の建物の中には池田享司の作品とAudemars Piguetの製品やブランドヒストリーが交互に設置され、空間全体も池田享司の作品イメージに近い黒ベースのもので統一されていました。また、池田享司の作品の中にもAudemars Piguetの時計のパーツが散りばめられていました。こうなってくると最早個人の作品とクライアントワークの間の線引きはあまり意味をなしません。

クライアントワークとしてのインスタレーション

厳密な芸術として以外のインスタレーションで有名どころで言えばミラノサローネでしょう。

特にCITIZENがクライアントなり、建築家田根剛が設計したtime is TIMEは写真を見た事がある方も多いのではないでしょうか。

『ブランドや商品を身体全体で体験できるように空間全体を作り込む』という意味でいうと、展示会の展示ブースなども広義のインスタレーションに相当します。

勿論こういった静的なものだけでなく、動的なものも沢山あります。こちらは同じくミラノサローネのSONYブース。人の動きに合わせて映像やオブジェクトが変化します。

巨大な構造物が最早空間全体を支配してしまっている場合もインスタレーションと呼んでいたりします。

とりわけこのような巨大で大量の物体が物理的に動くような彫刻作品はキネティックスカルプチャー(Kinetic Sculpture)と呼ばれたりします。

また、サウンドインスタレーションも多くあります。音はその性質上空間全体に波及していくので空間全体を設計しやすい、という特性があります。

インスタレーションを作る人や会社

様々な会社がインスタレーションの制作に関わります。プロジェクトの企画フェイズでは建築家デザイン事務所などにクライアントから直接声がかかる場合もありますが、広告代理店や大型の施工会社、イベント企画会社などがクライアントに話(インスタレーションの企画)を持ち掛けてプロジェクトが開始される場合もあります。

また、モニターやプロジェクター、スピーカなどの機材が必要な場合は機材会社が入る場合が多いです。機材は種類によって得意な会社が異なっています。下の表はインスタレーションを制作する際にチームを組むことになる会社と内容を列挙したものです(会社の例は一緒にお仕事したことある会社を並べています、実際は複数領域に跨っている会社などもあり、役割分担のは事前に確認したほうが良いでしょう)。

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テクニカルディレクターの関わり方

インスタレーションはこのように多数の制作物、多数の技術が必要なため、テクニカルディレクターの活躍の場が多くあります。具体的に挙げると、

企画
企画によって製作される制作物の実現可能性や実現した際の長所短所、制作工数やアサインが必要なチームや会社を検討する
プロトタイプ制作
インスタレーションは技術難度が高かったり、実施時のイメージ共有が難しかったりするため、企画段階でモックを制作し、イメージ共有や実現可能性の検討を行う
チームビルド
制作物に対してスキルや技術者が足りてない場合、その分野の会社や技術者、制作者をアサインする
プロジェクトマネージメント
効率的でクォリティを上げるための制作物の役割分担や、会社間連携が必要な場合の取り決めを発見し、迅速に策定していく
制作・実装
技術的難度が高かったり、プロジェクト上重要な制作物がある場合に自ら制作をする

などがあります。制作・実装の部分は一般的には特にソフトウェアや通信、他社の制作物との連携、コンテンツ制作(の中でも特に技術難度の高い箇所)、メカなどの機構設計の部分がテクニカルディレクターの担当となる場合が多く見受けられます。

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