ドキュメンタリー映画「ラ・カチャダ」上映後、青年団・俳優の福田倫子さんと髙橋智子さんをお招きし、「演劇ワークショップについて」お話を伺った。
1)演劇を通して世界を見ていく
▼高橋智子さん
演劇の良さも怖さもすごい詰まっていました。
大学時代、オリザさんから「演劇を通して世界を見ていく」ことを教わりました。自分の解像度を上げていくことで、世界の色が変わって見えていくということです。劇中の彼女たちもそのプロセスを体感していたと思います。
自分の経験を語って舞台を作り上げていくのは、日本でも最近増えています。ただ、それは危なくもあって、劇中でもファシリテーターが途中で彼女たちに傷づいていないかの確認をしていました。
私もワークショップに入る時は、個々が持っている物語に失礼のないように、なるべく安心してやってもらえることを考えるようにしています。
▼福田倫子さん
演出家が初日の楽屋で、これは「全ての子どものたち、社会のため、あなたたちのための作品よ」って言ってました。だとしたら一人の俳優・女性に課せられ、乗り越えないといけないハードルがが高すぎます!ハードルを乗り越えたら彼女たちは救われるかもしれないけど、乗り越えないないといけないものが高すぎて、なんか晴れないです。
演劇のある種危険な匂いも感じました。演劇を使って、自分を吐露させている部分です。
セリフを与えられて、それを言おうとしているときに、普段の自分を振り返ったり、自分を違う角度でみたりすることができます。私は、俳優として一つのセリフを前にした時に、自分を違う角度から見る作業をしています。そのあたりに通じるものがあると、反面で感じたりもしていました。
でも、本当に観られて良かったです。
2)物語に変換された瞬間
▼福田倫子さん
俳優が昔体験した若いころのエピソードを話して、それを高校生たちに劇にしてもらう「エピソードトーク」というワークがあります。
そのワークとこの映画が、若干似ていると感じました。
エピソードを話した人にとっては、自分の過去の体験を誰かが演じることによってすごく客観的に見ることができます。
高校生たちは、誰かの話をアウトプットしていく表現として組み立てていく面白さを体験することができます。
このワークの面白い点は、その続きを本当の実体験じゃない続き、彼らなりに考えてもらうというところです。
それが素晴らしいんですよ!
本当の体験じゃないからこそのありえない展開、自分がさも引き続き体験したような既視感を味わえます。
▼高橋智子さん
物語に変換された瞬間というか、自分の物語なんだけど、それがフィクションになった時に癒やされるというか、そういうことが起きます
▼福田倫子さん
オリザさんが以前言っていたのは、「自分が作品を作る上で目指したいのは、あるシーンを見て、一部のお客さんは笑っているけど、一部のお客さんは泣いているみたいなこと。同じシーンを見て、いろんな感情を持てるような芝居を作りたい」と仰っていました。
人によって切り取る部分は、悲しいとか辛いとか面白いとか感じる部分が違います。一つのエピソードを通して感じれる部分が客観性。そこが面白いと思えるのが演劇だと思います。
(レポート作成:杉本悠 / 写真:友金彩佳 / 当日ファシリテーター:歌川達人)
開催日:2021年10月30日(土) / 場所:江原河畔劇場
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