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優しい子

ある世界には沢山の人々が暮らしていました
そこに紛れた異物が一つ
彼は食べることも眠ることも欲がないまま
ただ一つ感じる寂しさに誰かの温もりを求めていました

怖くても嫌でも笑顔絶やさずに友達を求めた化け物は
痛みもなく殴られて 死ぬこともなく笑われて
生まれた記憶も辿れないのにずっと草陰で夢を見ている
「家族が見つかりますように」
「そしていつか友達ができますように」

冷えた体に触れる優しい指先
目を向けるとそこには微笑む老人
一人でいるならここにおいで
みんなお前の家族だ 誰もお前を傷つけやしない
一人ぼっちの化け物は家族を見つけました


ある宇宙には大きな存在が生きているのです
そこに生まれた奇跡が二つ
それは小さくとも自由で ———
化け物の周りを嬉しそうに飛び回り友達と呼んでくれました

嬉しくて嬉しくて笑顔は絶えず友達と遊んだ化け物は
時間もなく自由で 眠ることなく笑い合って
これからの時を辿るように一本の樹に約束を交わす
「私たちはずっと友達よ」

突然の戦火に燃ることも知らず

外からの正義はとても傲慢で
豊かな自然も優しい家族も消えて行きました
自我を失い求めるまま血を流させる
傷を恐れず人を殺すその姿は
それはそれは恐ろしい化け物でした

目を覚ますとそこは見知らぬ世界でした
残った約束の樹と醜い化け物は
時を止められたかのように
ずっと独りで寂しく歌っていました


いつか導く桜 触れる優しい指先
目を開くとそこには綺麗な世界
一人じゃないと教えられ
全てお前が守った もうお前は傷つかないでいい
一人ぼっちだった化け物は世界を見つけました


優しい子よもう一人で泣かないで
優しい子よ私たちがずっと友達

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