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【助手席の異世界転生】毎週ショートショートnote

その駅前にある魔法陣に足を踏み入れると、タクシーが現れた。異世界転生タクシーだ。竜の行燈がそれを表している。
徐に助手席のドアが開いた。
「まいど」とチンパンジーの運転手がニカッと白い歯を見せる。運転手はチンパンジーに決まっているらしい。
「今日は竜と戯れてみたいな」
「ドラゴンマスターなんてどうです」
「よし決まり」
タクシーは舞い上がり空を駆ける。意識が暫く奪われ、俺は竜の立髪を掴んでいた。竜の頭上にいるのだろう。

『おまえが竜使いか』
「ああ、そうだ。散歩でもしないか」
『散歩だと? 舐められたもんだな』
竜は凄まじい勢いで天空へ上昇する。俺が地上へ振り落とされるとでも思っているのだろう。
立髪の手綱を左右上下に引けば、どちらへも旋回できる。
竜は手綱さばきに口煩い。
『そこ右っ!』
「おう」
『そこは左だろ!』
「おまえ、人使いが荒いな」
どこかでチンパンジーの笑い声が聞こえた。


たらはかにさん企画
毎週ショートショートnote
お題「助手席の異世界転生」より

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