3年生の質問への回答・・・エステルの加水分解について
エステルの分解について次のような質問がありましたので,
みなさんと共有したいと思います。
Q. 加水分解は水を加えて分解するイメージなんですけど,
問題集を解いていたらエステルをNaOH(塩基)で加水分解したり,
アミドをHCl(酸)で加水分解したりしていて,頭が混乱してきました。
酸または塩基で加水分解するとはどういうことか
詳しく教えてほしいです。
A. 加水分解は「水を加えて分解するイメージ」とありますが,
加水分解には無機化学での「塩の加水分解」や
ここで出てくる「有機化合物の加水分解」など,
複数のタイプが存在します。
今回の話題に上がっているエステルの加水分解は,
教科書などの説明にあるように酸を用いた
エステル化の逆反応のことを言います。
(そもそもエステル化が酸触媒を用いた反応です)
加水分解の反応式を見てもらうとわかりますが,
エステルを分解してカルボキシ基にOHを,
ヒドロキシ基にHを挿入して,水でエステルを分解しているように
見えるので加水分解と呼んでいます。
有機化合物の加水分解では共有結合を切るので,
速度が非常に遅くなってしまいます。
ですから,触媒として酸(H+)を加えることで,速度を上げています。
ややこしいことに,この触媒に塩基を用いることもできます。
(塩基中では生じるカルボン酸が中和された形で生じるために
触媒とは言いづらいですが・・・)
この反応は油脂(エステル)からセッケン(高級脂肪酸の塩)を
作るときに用いられていた反応なので「セッケン化」
略して「けん化」といいます。
すなわち,エステルは,酸・塩基のどちらでも分解でき、
酸性条件での分解を「加水分解」,
塩基性条件での分解を「けん化」と呼んでいます。
これらの酸性・塩基性条件での分解は、アミドでも行うことができ、
酸性条件ならアミンの塩とカルボン酸、
塩基性条件ならアミンとカルボン酸の塩に分解します。