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「うっかりは伝染しない」

仲良くしていると、いつの間にか影響を受けて口癖が同じになったり、好みが似てきたりすることがある。
以前仲良かった人が(もう仲違いした)「〜なのさ」という口癖で、気付けば自分も「〜だったのさ」と、口をついて出ていることに気づき恥ずかしくなった。

また、ある人は何か問題が発生すると、独り言で「しまったしまった!島倉千代子」と言うので、「なぜオッサンはこの手のつまらない洒落を言うのだろう」と冷ややかに見ていたのだが、あるとき心の底から「あ!しまった!」と思った次の瞬間「しまった!しまった、島倉千代子」と声に出していた。
その日以来、その言葉は心を落ち着かせるおまじないのように口から勝手に出てくるようになった。

さて、そんな恐ろしい伝染病がある一方で、「うっかり」は意外にも移らないようだ。
わたしの周りには見事なうっかり屋が大勢いるのだが、時々、友人の中に「あなたのうっかりが移っちゃったわよ〜」なんて言う人がいる。

気軽に言わないでほしい。あんたがもともとうっかり屋だっただけである。

というのも、うっかりしない人間は何年経っても何年付き合っても何年共に暮らしてもうっかりしないのだ。
なんなら、うっかり屋と一緒に過ごしているとますます「きっちり屋」に磨きがかかる。

「きっちり屋」については以前書いているが、うっかりの才能を持ち合わせていない性質の人間を指す。

きっちり屋に「なにかうっかりネタはないのか?」と聞くと、考え込む。
「すぐには思い出せない」と言い、数日経って「あったあった!」と喜んで話してくれる内容というのがこんな話。

「通勤電車で立ったままうっかり寝て、隣の人にもたれかかってさぁー!あははははははは」

こういう話を聞かされた時のリアクションをどう取れば良いのか、いまだにわからない。
「あはははは、そうなんだ。」
この時、自分の中に「うっかり屋になれない人」に対する哀れみを覚える。

ただ、その辺りの微妙な空気を読めるのが「きっちり屋」で自分で言って自分で笑ったあと
「あ、ごめん。たいしたネタじゃないよね」 

さらにボソリとこう言う。
「うっかりがある人が羨ましくなってきたよ」

なんだろう、この「憧れられ感」は?
ひどいうっかりばかりやらかして、開き直りつつも時には情けなさを感じている、こんな自分を羨ましそうに見つめる人。

うっかりをする人種はきっちり屋に支えられて生きている。
いつもありがとう!
世の中がうっかり屋ばかりで構成されていたら、いつも目的地に到着せず、いつも待ち合わせ時間に集合できず、いつも焼酎抜きのお湯割を飲むはめになる。
うっかりは伝染しない。
あくまでも先天性であり、多くの人は抗体を持っている。
抗体、、、「学習能力」とも言う。

#うっかり  #あるある #伝染しない 


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