シリーズ企画「ひとり情シスを救いたい」ひとりで悩まないで①
中小企業でのデジタル化課題は騒がれておりますが
複雑な人間関係、規模や業種、興味や方向性などの観点から
簡単には解決出来にくい部分でもあります。
特に中小企業では人員、予算の関係で「ひとり情シス」に頼らざる得ない状況。そんな多くの現場を見て来た経験と自身の経験からシリーズ企画として「ひとり情シスを救いたい」と題して関係者へのアドバイスや応援内容を言語化してみます。
管理と運用は分けるべし
ITシステムの管理とは、システム全体の計画、組織、監視、および維持を指します。これには、ハードウェアとソフトウェアの資産管理、セキュリティポリシーの実施、利用可能性の確保などが含まれます。
運用とは、システムが効果的かつ効率的に機能するように日常的に実施される具体的なタスクやプロセスを指します。例えば、トラブルシューティング、バックアップの実行、ユーザーサポートなどが該当します。
ひとり情シスの落とし穴
多くのひとり情シスは、運用を任されることから始まります。PCのキッティングやトラブル対応など、ユーザーからの直接的な問い合わせに対応する業務が多いためです。
しかし、運用にばかり注力していると、管理が疎かになりがちです。管理は、運用を支える土台となる重要な業務です。管理が疎かになると、以下のような問題が生じます。
システムのセキュリティが脆弱になる
システムのパフォーマンスが低下する
システムのアップデートや変更が適切に行われない
解決策:管理と運用の分離
ひとり情シスの孤立感を解消するためには、管理と運用を分離することが重要です。管理と運用は、それぞれに異なるスキルや知識が求められるため、混同していると、担当者の意識と管理職の期待のズレが生じ、孤立感につながります。
具体的には、以下の3つのステップで管理と運用を分離しましょう。
管理と運用の業務内容を明確にする
まずは、管理と運用の業務内容を明確にします。管理と運用の定義を参考に、それぞれの業務内容を洗い出し、担当者ごとに割り当てます。
マニュアルやガイドラインを作成・整備する
管理業務を効率的に行うためには、マニュアルやガイドラインを作成・整備することが重要です。マニュアルやガイドラインがあれば、担当者がいつでも必要な情報を確認することができます。
管理体制を整える
管理体制を整えることで、管理業務の責任と権限を明確にすることができます。管理体制を整えるには、管理委員会や管理責任者を設置するなどの方法があります。
まとめ
ひとり情シスの孤立感を解消するためには、管理と運用を分離することが重要です。管理と運用を分離することで、以下のようなメリットが得られます。
システムの安全性と信頼性が向上する
システムの運用効率が向上する
担当者の負担が軽減される
ひとり情シスの方は、ぜひ本記事を参考に、管理と運用の分離を検討してみてください。
手柄を作るより借しを作る
中小企業では、デジタル化が進んでいないこともあり、社内のデジタル格差が大きい。そのため、少し技術を知っている(PC好き)人は、会社内で重宝される。その結果、そのまま「IT担当」になったりしているケースが多い。
IT担当として働いていると、最初は皆から頼られ、モチベーションも高まる。しかし、いつしか「なぜ自分だけ?」「他の人はなぜ学ばないの?」と、デジタル格差に不満を感じるようになる。
そして、その不満が蓄積されることで、ひとり情シスの孤立感と不満分子へとつながっていく。
では、ひとり情シスが孤立感を解消するためには、どのようなマインドを持つべきなのだろうか。
それは、「手柄を作る」のではなく、「借りを作る」マインドを持つことだ。「手柄」を作るためには、常に結果を求められ、プレッシャーがかかる。そして、結果が出ないと、不満やストレスが溜まってしまう。
しかし、「借り」を作るためには、結果を求められるわけではない。まずは、相手の役に立つことを第一に考え、その積み重ねが「借り」になる。
そして、その「借り」が、自分の立場や影響力を大きくしていくのだ。
私自身も、ひとり情シスとして働いていた経験がある。当時、私は会社のトップから、海外出張の際に海外でもメールを確認できるように設定してほしいと依頼を受けた。
当時は、インターネットがダイヤルアップ方式だったため、海外のホテルからVPNを活用して社内のサーバーに接続してメールを確認できるように設定した。また、専用のVPN接続マニュアルも作成した。
トップの方からはかなり感謝され、海外のホテルから私宛てにメールが届いた。そのメールで、海外からメールを確認できたことへの感謝と、グローバルな仕事ができて楽しかったという感想が書かれていた。
この経験から、私は「手柄を作る」のではなく、「借りを作る」マインドを持つことの大切さを学んだ。
「借り」を作ることで、社内の関係性が良好になり、自分の立場や影響力も高まっていく。そして、それはひとり情シスの孤立感を解消することにもつながっていくのだ。
担当に必要な要素はPC好きではなく文書好き
ITサポートを行う上での「管理や管理体制」の構築には、絶対に欠かせない業務スキル(特性)があります。
あなたは「筆まめ」ですか? レポートや文章、報告書などの作成(入力作成)は得意ですか? 文章作り(入力)に苦手意識はありませんか?
これは多くの方が苦手意識を抱き、可能であれば避けたい仕事の上位に位置していることが考えられます。
このような状況では、「マニュアルやナレッジの重要性」を強調しても、「忙しいから後回し」という理由で優先度が低くなり、モチベーションも上がりにくいお仕事です。
私自身は、日々のブログ活動を通じてお伝えしている通り、入力作業に関してはストレスを感じず、デジタルな文字情報に触れることが大好きです。ただし、私が一種の変態であるとしても、それは置いておきましょう。
IT担当者としては、「マニュアルやナレッジ」の重要性を本当に理解している方は少ない傾向があります。そのため、担当者を選ぶ際の重要なポイントは、
運用が得意なPC好きな方
PCスキルなどは苦手でも文書作成が好きな方
このような組み合わせが最適であることは間違いありません。PCスキルなどの運用技術は調べれば学べますが、ドキュメント化に対する苦手意識は個人の資質に関わります。是非、これらのポイントを考慮に入れて選定してみてください。
弊社だけではない、他社も一緒、周りを見よう
企業内では、社内政治や狭い人間関係の中で仕事を進めることが一般的です。そのため、課題解決や人間関係、対応策など、狭い世界の中で頭を悩ませることが多いのではないでしょうか。
情シス担当者の場合、特に「こんなことやりたい」「このようにあるべきだ」という思いがあっても、企業規模や予算、知識レベルなどの制約から実現できないことも少なくありません。
そのような状況で陥りがちなのが、「うちの会社はダメなんだ」などのネガティブな思考です。もちろん、他社と比較して自社が劣っている部分もあるかもしれませんが、それはあくまでも表向きの姿に過ぎません。
狭い村社会に囚われていると、八方塞がりに陥ったり、追い込まれて悩んだりするケースも少なくありません。社内や周りに相談できる人がいないと、不安に感じますよね。
そんなときに、ぜひ覚えておきたい言葉があります。
「あなたの困ったは、既に解決できる誰かがいます」
お仕事上のお悩みに関しては、多くの場合、既に回答は出ています。程度の差はありますが、同業を含めた他社でも同様に悩み、解決を行い、進捗しています。
結局のところ、「ひとり情シス」として社内では孤独でも、同じ悩みを持った同志は周りにたくさんいるということです。
これが「まちの総務」コンセプトにもつながります。匿名でも実名でも構いません。個人で悩んだら、まずはSNSも活用して外の情報にアタッチしてみましょう。同様に悩んでいる同志が見つかります。解決方法をアドバイスしてくれる有志もたくさんいます。
「まちの総務」でも、そのような方々を繋げさせていただきます。社内のデジタルに関するお悩み課題は、決して一人で抱え込まないでください。「あなたの困ったは、既に解決できる誰かがいます」
すべての情シス関係者で、有益な繋がりを目指しましょう。
デジタルの力で社内ヒエラルキーをフラットに
デジタル化の進展は、企業組織のヒエラルキーにも大きな変化をもたらしています。
従来のヒエラルキーは、経験や年齢などの要素に基づいて、上位から下位へと権限や責任が割り当てられる階層的な構造でした。しかし、デジタル化によって、経験や年齢に関係なく、誰もが新しい知識やスキルを身につけることができるようになりました。
その結果、デジタルリテラシーの差が、従来のヒエラルキーを覆す新たな力として浮上してきました。
例えば、IT担当者の場合、デジタルリテラシーが低い上司や経営者をサポートする「IT介護」と呼ばれる業務に追われることも少なくありません。しかし、デジタルリテラシーの高いIT担当者は、そのスキルを武器に、社内における影響力を高めていくことができるのです。
もちろん、デジタルリテラシーだけで、社内ヒエラルキーを覆すことはできません。しかし、デジタル化の力をうまく活用することで、従来のヒエラルキーにとらわれない、フラットな組織づくりに貢献することができます。
そのためには、まず、上司や経営者に対して、デジタル化の重要性や、デジタルリテラシーを高めることのメリットを理解してもらうことが大切です。また、IT担当者自身も、デジタルリテラシーを向上させるだけでなく、コミュニケーション能力やリーダーシップなどのスキルも身につけておく必要があります。
デジタル化の時代において、社内ヒエラルキーをフラットにするためには、IT担当者のマインドチェンジが不可欠です。デジタルリテラシーを武器に、社内における影響力を高め、フラットな組織づくりに貢献しましょう。
次回に続きます。
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